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100年に一度の電力システム大転換、ここまでのおさらい

わたしたちの身近なインフラとして、最も無くてなならず、かつあること自体すら意識していないもの、それが電力と水だと思います。

この電力のあり方が、御上が統括していた時代から自由化へ転換してきており、すでに大きな変化も出ていますが、ここから数年でまた更にガラッと変革が起きそうです。背景にあるのは、「かかった費用をすべて転化する総括原価方式から、競争原理市場を用いた自由化への転換」、そして「脱炭素化をのための再生可能エネルギーの導入」です。

この電力業界は規制の塊で、かつ大手電力が業界を牛耳っているという新しいことをやっていくには非常に厳しい構図なのですが、そうはいっても改革しなければと言う場合「表面的に競争環境が出来上がったように見えて実は旧来の大手電力に有利な設計になっている」ということが起こりがちです。

しかし、コロナによる転換の気風、環境意識の高まりとそれによる日本のエネルギー政策に対する欧米からの批判によって「やったフリ」ではない本気の転換の兆しを感じています。

そこにはお国の動向がカギになるのですが、非常に大きなニュースが飛び込んできました。

温暖化ガス排出、2050年実質ゼロ 菅首相が所信表明へ: 日本経済新聞
政府が温暖化ガスの排出量を2050年に実質ゼロにする目標を掲げることが分かった。菅義偉首相が26日、就任後初の所信表明演説で方針を示す。欧州連合(EU)は19年に同様の目標を立てており、日本もようやく追いかける。

「2050年に温室効果ガス実質ゼロ」菅総理あっぱれです。そして河野行政改革大臣も再エネ普及に向けて規制を総点検すると発言をされています。

再生エネ普及へ規制総点検 河野規制改革相
河野太郎規制改革相は日本経済新聞のオンラインでのインタビューに答え、再生可能エネルギーの活用促進に向けて既存の制度を総点検すると表明した。風力や太陽光発電の利用を増やすため「きっちり課題の洗い出しを

ということで、今後の電力システム改革の動きから目が離せないわけですが、一度基本に立ち戻り、METI・資源エネルギー庁のHPをベースに、ここまでの電力システム改革の流れをおさらいしてみたいと思います。

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発電事業の概要

過去どういう経緯だったかという部分は説明に必要な部分を除き省くことにします。

発電事業は大きく分けると、「発電」「送電」「小売」の3つに分かれます。これまで日本列島を10個のエリアに分け、それぞれにおいて地域電力会社が3つまとめて担っていました。今起きている流れはこの3つを分割し、それぞれにおいて競争を促すことです。

資源エネルギー庁:電力供給の仕組み
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/pdf/kyokyu_shikumi.pdf

この中で種類が複数ありわかりにくい送電について触れておきたいと思います。

送配電事業

ほとんどすべての送配電網を持つ大手電力会社が「一般送配電事業者」に該当し、自前で一部送配電網を持ちながら、この一般送配電事業者に対して配電事業を変わりに行う「送電事業者」、そして工場の内部など特定区域において電気の供給を行う「特定送配電事業者」に分かれます。

3つの送電事業は許可制のため、許可されている事業者は以下のエネ庁HPに公開されているのですが、3社しか事業会社がなく特殊なカラーの「送配電事業者」について触れてみたいと思います。

送配電事業者一覧(一般送配電事業者、送電事業者、特定送配電事業者)|資源エネルギー庁

電源開発送変電ネットワーク株式会社

J-POWER(電源開発)の子会社ですが、一体どれだけの送配電網を有しているのでしょうか。

総延長2400kmもあり、日本全国のあちこちにあることがわかります。特に北海道ー本州間、本州の周波数が変わる区間、本州ー四国間、本州ー九州間という、日本列島の連結部を担っていることがわかります。

もともと戦後GHQにより日本発送電が解体され、地域電力会社に分割された際、これらを支える形で国営の特殊会社としてインフラを担ってきた経緯によるものでしょう。

J-POWER送変電:送変電事業地図
https://www.jpower.co.jp/tn/business/map.html

北海道北部風力送電株式会

NEDOによる、風力発電のための送配電網整備実証事業を受託して行っている会社のようです。
本実証事業の概要は以下

平成28年度「風力発電のための送電網整備実証事業費補助金」北海道で実施する実証事業(実施事業者:北海道北部風力送電株式会社)の詳細について|資源エネルギー庁
経済産業省・資源エネルギー庁のホームページです。平成28年度「風力発電のための送電網整備実証事業費補助金」北海道で実施する実証事業(実施事業者:北海道北部風力送電株式会社)の詳細について

北海道は風力の膨大なポテンシャルがあるものの、需要地から遠くどうやって送電網を整備していくのかが課題であるため、うなずけます。事業概要を見ると、出力の合計が60万kWに対し系統容量は30万kWということで、稼働率の低い再エネに合わせたスリムな送電網が計画されていることがわかります。

送電網の容量が何によって決まるかというと温度なのですが、実際の温度によって送電可能量を決めるダイナミックレーティングについても実証するということです。
会社のホームページを拝見すると以下のように北海道の北端稚内の80km区間が対象になっていることがわかります。

北海道北部風力送電株式会社
https://www.hokubusouden.com/

福島送電株式会社

福島県の復興エリアに再生可能エネルギーを導入していこうという「福島新エネ社会構想」が震災後に進んでいます。2040年に県内需要量以上のエネルギーを再生可能エネルギーで生み出すという目標なのでかなりアグレッシブです。

全体像としては、福島エリアは陸側も海側も風力発電の適地のため、原子力発電所が停止して空いている巨大な送配電網を使って東京圏へ電力の大量輸送、そして風力の不安定性を担保するために水素をキャリアとして用いるという計画に読めます。

そのための阿武隈、双葉エリアの風力発電用送電線増強に25億円ほどの予算が付いており、これを受託しているのが「福島送電合同会社」のようです。

福島県エネルギー課:福島県における再生可能エネルギー 導入推進施策について H29
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/life/306077_738380_misc.pdf

福島発電と東電がメインの合弁会社を東邦銀行を筆頭とした銀行団が資金援助するというスキームのようです。福島発電は福島県からの出資を受けて立ち上がり、多くの地元自治体や企業が出資している事業会社のようです。
この合同会社はスキームからして公的な側面が強いですね。

以上3つの送電事業者をみてきましたが、特殊事情で送電事業を行っている会社なのだなという理解を深めました。

小売電気事業

16年4月から小売事業が全面自由化され、合計約18兆円の市場になっています。既に4年経過しており、身の回りでも大手電力会社以外の会社から電気を買っている人も増えてきたように思います。

小売り電気事業者に登録している事業者は20/10/23現在で、684社います。

登録小売電気事業者一覧|電気事業制度の概要|資源エネルギー庁
経済産業省・資源エネルギー庁のホームページです。登録小売電気事業者一覧、登録特定送配電事業者一覧。

この中で実際にJEPX(電気の卸売市場)で取引をしている会社は215社です。市場で取引しないとなると、全て発電事業者と相対取引して電気を調達することになるのですが、本格的に小売事業を行っていれば市場を使わない理由はないので、実態として1/3の約200社が新電力と言えるかと思います。

取引会員情報|JEPX
一般社団法人 日本卸電力取引所の取引会員情報についてのページです。

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20年4月までに行われた3ステップの電力システム改革

「電力システム改革に関する改革方針」(平成25年4月2日閣議決定)において、以下の3段階からなる改革の全体像が示され、必要な措置を定めた電気事業法改正案が、それぞれ国会で成立しました。

以下に概要を示しますが、ちょうど今年の4月に第3段階が完了し一通り終わったことになります。しかし実際には、電力取引市場関係はまだまだ始まったばかりですし、需給調整市場はこれからオープンしていきます。まだまだ細部をめぐる課題は山積みで、これから議論しながらその詳細が決まっていくことでしょう。ここでは経産省の方針(以下の資料)をまとめる形で、電力システム改革の全体像を確認しておきたいと思います。

電力システム改革の目的

安定供給の確保

今までも安定供給は最重要事項でしたが、変わらず重要要件として据えられています。市場原理に任せすぎて長期的にインフラが維持されないようなことを避け、再エネ導入が進み不安定電源の割合が増えていく中でも安定を維持するといった意味合いが強いです。災害時における地域を跨いだ電力融通の仕組みも歌われています。

電力料金の抑制

競争の促進、地域を跨いで安い電源へアプローチできるようにします。これにより小売の競争によるコスト削減、発電における燃料調達や効率性の追求、ピークシフト料金等のインセンティブにより投資を抑えることを目指します。

選択の機会を拡大

地域独占から、電力会社・料金プランを選べるようにします。

第1段階.広域系統運用の拡大

広域連携運用機関の設立

その役割は、

  • 需給計画、系統計画をとりまとめ
  • 周波数変換設備や地域連係線等の送電インフラの増強といった地域連携の改善を行い、託送料金で回収(一般送配電事業者の管轄外の連携部分の強化)
  • 連系線及び基幹系統の潮流の管理を行い、エリアの送配電事業者と需給調整・周波数調整を行う
  • 需給逼迫時(予備率一定値以下)に電源の焚きまし、調整契約の発動、地域間融通の指示などを行う
  • 系統アクセス業務、系統情報の公開を中立的な立場から行う
電力広域的運営推進機関ホームページ

第2段階.小売及び発電の全面自由化

すべての需要家が電力会社を選べるようになる

H25資源エネルギー庁;電力システムに関する改革方針(参考資料)
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11445532/www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/system_reform002/pdf/20130515-2-3.pdf

今回の電力システム改革以前から、6,000V以上の高圧に分類される電気の販売は自由化されていました。しかし日常生活で使うのは低圧領域の電気のため、一般的には実感されにくいところでもあります。これが全面自由化になるという改革でした。

東京電力、九州電力、といった地域電力以外の電力会社と契約し電気を利用できるようになって久しいですが、以下のようなポイントがあります。

  • 競争環境が整い、過度な料金値上げが起こらないことを確認した後料金規制を撤廃
  • 小売事業者の破綻時など、最終的には送配電事業者が必ず供給する適任を負う(最終保障サービス)
  • 離島でも他地域と遜色無い料金で安定供給を保障する(ユニバーサルサービス制度)

発電の全面自由化

一定規模・契約期間に渡って電気を供給する場合の総括原価方式の料金規制や供給義務を廃止します。

小売総販売量の0.5%にとどまる卸売市場での取引を増加させます。

なお、上図は10年前のデータですが、改革の進捗に伴いその量は増加し、直近は30%台まできています。

電力・ガス取引監視等委員会:第48回 制度設計専門会合 事務局提出資料 R2.6.30
https://www.boompanch.info/wp-admin/post.php?post=1498&action=edit

第3段階.送配電部門の法的分離

中立性の確保

大手地域電力が発電・送配電・小売と垂直統合で事業運営をしてきた構図から、小売と発電を分離して競争させるには、大手電力の3つの部門が分離され、中立性を保つことが肝要です。皆が公平に送配電網を利用することができる必要があります。

法的分離とは、送配電部門全体を別会社化する方式です。日本では、ホールディングスとして親会社が存在する東電・中電のケースと、それ以外の電力の発電・小売が親会社となり子会社として送配電会社があるケースに分かれています。前者のほうが独立性が高いと言われています。

Energy Shift:自然エネルギーのさらなる導入拡大に向けた電力システム改革を 自然エネルギー財団電力システム改革に対する提言
https://energy-shift.com/news/c78ea249-95df-4085-af5d-589f7d8e3b1f

また、規制機関により、会社間で情報遮断や役員・幹部職員の異動人事の制限により送配電会社の独立性が確保されているかの確認がなされます。

安定供給

以下のような要件があります。

  • 送配電に係る投資回収は総括原価方式を踏襲、地域独占も維持する。
    新電力を含めた小売事業者に対し、需要に対応した供給力の確保がされる仕組みにする。
  • 将来の電源不足が不安視される場合は、広域系統運用機関が発電所建設者の公募入札を行うことで、将来電源を確保する。建設コストの一部はサーチャージ等で負担。


さて、結構な分量になってしまいましたが、電力システム改革、特に発送電分離を厚めにまとめました。次回以降、電力システム改革の続きに進みたいと思います。

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