タイトル

「エネルギー大転換」を掘り下げる「化石燃料・原子力」編

「日本化学未来館」で開催されている「エネルギー大転換」に行ってきました。
20年1月17日~3月29日の間で開催されている企画展です。10個のブースでクイズ形式で展開されていくのですが、自分毎として考えながら学べるので、エネルギーに興味がある人にはも無い人にもオススメです。

「どうする!?エネルギー大転換」 Energy Transitions
日本科学未来館 2020年1月17日(金) - 3月29日(日)

ちなみにこの企画、一体どこがスポンサーなのかというと、「ドイツ博物館」とのタイアップだそうです。ドイツ博物館での企画を日本へ輸入したのだそうです。

完全ネタバレなのですが、今回は内容の紹介をしながら、バックデータなど掘り下げていきたいと思います。

スポンサーリンク

1.化石燃料

エネルギーの主な使われ方は、「冷暖房(特に暖房)」、「電気」、「運輸」です。そのほとんどは化石燃料によって賄われています。

化石燃料は数億年という単位をかけて形成されてきたものですが、産業革命以降大量に消費しているため、今後数十年で使いつくしてしまう可能性があります。

加えてCO2を排出するため、地球温暖化を促進させます。私たちは化石燃料への依存からどのように脱却できるのでしょうか。

  1. 石炭から天然ガスへの移行
  2. 化石燃料に炭素税をかける
  3. CO2を地下に埋める技術の開発(CCS)

以下は、国内における一次エネルギーから最終エネルギーまでのフローを表した図です。

エネルギーは何から作られ、どう消費されているのか


【第211-1-3】我が国のエネルギーバランス・フロー概要(2016年度)
資源エネルギー庁「平成29年度エネルギーに関する年次報告」 (エネルギー白書2018)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018pdf/

一次エネルギーの化石燃料比率は9割

左端、一次エネルギーの割合を円グラフにしたのが下図です。こう見ると化石燃料(ガス、石油、石炭)でおよそ9割であることがわかります。

次に最終エネルギ-消費の方ですが、消費地でいうと「企業・事業所」が圧倒的ですね。
これだけだと、何に使っているかわからないので、用途別エネルギー消費のデータを持ってきます。

家庭で消費されるエネルギーの半分は暖房+給湯

下図は家庭で消費されるエネルギーの消費源の割合です。こう見ると、「暖房」と「急騰」で半分を占めています。つまり、「温める」ことに使うエネルギーが膨大だと言えます。確かに、ドライヤーに電子レンジに高温にする機器のワット数は他の家電機器と比べてもかなり大きいですよね(1000Wとか)。

【第212-2-6】世帯当たりのエネルギー消費原単位と用途別エネルギー消費の変化
エネルギー白書2018: https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018pdf/

運輸部門はほぼ自動車とトラック

一方運輸部門は、ほとんどが「自動車」であることがわかります。グラフは割愛しますが、「運輸旅客」に関しては8割が自家用車、「運輸貨物」に関しては、9割が自家用・営業用トラックだからです。つまり、モビリティを電動化していくことでかなり化石燃料の使用量を減らせる可能性があります。単に電化していくだけでは、電気を化石燃料から作っている限り良くなりませんが、再エネ由来の電気でモビリティが走るようになると劇的に化石燃料使用量を減らせると言えます。

ここでは詳しく触れませんが、走行時のCO2排出量(Tank to Wheel)だけではなく、燃料採掘から自動車生産時まで含めたCO2(Well to Wheel)で見ると電気自動車よりもハイブリッド車の方がCO2排出量は少ないというデータもあります。そういう意味では、CO2排出量を議論する際は製品を使っている時だけでなく、製品の製造段階から考える必要があります。

自動車の化石燃料比率は高いですが、単に電動化するだけでは電気を何から作っているか次第で逆効果にもなりうることを留意しておく必要があります。

企業・事業所における消費エネルギーは多様

最終エネルギー消費の6割を占めたのがこの「企業・事業所」でした。この部分の実に7割が「製造業」になります。製造業は物を作る過程で大量のエネルギーを消費すること、日本は製造業が活発なことがよくわかります。

製造業だと括りが大きいので、内訳を細かく分けて示したのが以下のグラフになります。

ちなみにこの「総合エネルギー統計」ですが、初めて見たのですが、各部門ごとのエネルギー消費が細かく記載されていてものすごいデータです。お宝です。

さて、これを見ますと、「化学工業」1/4、「鉄鋼・金属」1/4、「第三次産業」1/4、「その他」1/4といったところでしょうか。この全体の量を減らすことも、化石燃料比率を下げることも中々イメージが湧きません。

鉄鋼など、炉でガンガン高温にするには化石燃料が必要ですし、化学工業もそもそも原料が石油由来だったりします。この辺はもう少し違う切り口で考える必要がありそうです。

日本のCO2削減目標値

日本は世界で10番目に人口が多い国ですが、CO2排出量は世界で5番目です。
現在国会では、30年までに26%、50年までに80%CO2を減らすという目標が閣議決定されています。

図2-3-1 我が国の温室効果ガス排出量と中長期目標
環境省: 第3節 パリ協定を踏まえた我が国の地球温暖化対策
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h29/html/hj17010203.html

一次エネルギーに占める化石燃料比率が現在9割なわけですが、26%減は何とか達成できそうな気がします。しかし50年の8割減となると、達成の必要性は認識しつつも、道筋は皆目見えないように思えます。単に再エネ比率を上げるだけでは済みません。

随分最初の項目で長くなりました、次行きます。

スポンサーリンク

2.原子力エネルギー

原子力エネルギーを積極的に使うかは世論を二分しています。以下のようにメリット・デメリットありますね。

  • 〇:CO2を排出しない、安価
  • ×:原子炉事故の脅威、放射性廃棄物の安全な保管

原子力に対してどういうスタンスで臨むべきでしょうか、 技術革新によってデメリットを克服できるかもポイントになりそうです。福島第一発電所の事故では実際に16万人が避難することになり、大きな被害が出ました。

  1. もっと原発を建てる
  2. 原発は閉鎖すべき
  3. 核融合による発電を目指す

日本の方針は、安全性に最大限配慮した再稼働推進

平成30年3月26日 資源エネルギー庁:2030年エネルギーミックス実現へ 向けた対応について ~全体整理~
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/025/pdf/025_008.pdf

原子力の観点からみますと、現在発電量の2%に過ぎない割合を、30年時点で20~22%に引き上げようとしています。つまり、今後再稼働を進めていくということになります。

そのためのポイントは三つにまとめられそうです

  • 安全設計強化:事故の原因となりうる災害の想定範囲を拡大し、安全設計を強化
  • 重大事故対策:事故が万が一起きたとしても被害を最小限に抑える対策
  • バックフィット:最新の技術的知見が更新されるたびに、全ての原発に反映
平成30年3月26日 資源エネルギー庁:2030年エネルギーミックス実現へ 向けた対応について ~全体整理~
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/025/pdf/025_008.pdf

さて、ここで疑問に思うのは、果たして今2%しかない原子力を20%まで増やすことが可能なのだろうか?ということです。昨今の状況を踏まえると、再稼働ですら相当ハードルが高くなっているので、新設は検討もできない、というのが正直なところだと思います。

では、今ある原発をフル活用するとしてどのくらい達成可能かシミュレーションしてみました。

いくつか前提条件を確認しておきます。

日本全体のトータルの発電量

経産省の長期エネルギー見通しを見ると、2013年と2030年のトータル電力需要はほとんど変わりません。よって、原子力発電量の割合を求める上での分母である総発電量は2030年の10650憶kWhを全区間(2019~2050まで)一定と仮定します。

平成27年7月 「経済産業省」 長期エネルギー需給見通し
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/pdf/report_01.pdf

原発の設備利用率

原発の設備利用率はどのくらいか調べてみると、下図のデータより、2018年実績で稼働中のプラントを平均すると70%でした。

JAIF:2018年(暦年)の原子力発電設備利用率は15.0%
https://www.jaif.or.jp/190115-1

従って、例えば100万kWの出力の原発があった場合、その発電量は次のように計算できます。

100万kW×24h×365day×70%=87.6憶kWh

原子力発電所の一覧と稼働状況

現在の原子力発電所は建設中のものも含めると(計画中は除く、建設中は含む)60基あります。

資源エネルギー庁:原子力政策について
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/001/pdf/001_02_001.pdf

これらは以下のように分類できます。

  • 再稼働:安全審査をパスして運転再開している原発
  • 設置変更許可完了:再稼働のための審査をパスした原発(再稼働はまだしていない)
  • 審査中
  • 未申請
  • 廃炉予定、廃炉作業中

このうち、「廃炉予定・作業中」のものはもう動きませんので、カウントできません。「未申請」のものは申請していないため、動く可能性は限りなく低いですが、ポテンシャルはゼロではないと言えます。よって含めるケースと含めないケースを考えました。
「審査中」のものは、全て動くと大胆な仮定をしましょう。

震災後設けられた「40年ルール」

原発の運転期間を原則40年とするルールを福島の事故後、民主党政権により導入されました。運転延長は「例外中の例外」(当時の細野豪志原発担当相)と強調されていました。しかし、原子力規制委員会は既にいくつかの原発の運転延長を認めており、このルールは形骸化しています。

この40年ルールを守って40年で原発を廃炉にしていった場合と、20年延長して60年で廃炉にしたケースと二種類の場合でシミュレーションしました。

東海第二原発「40年超」、規制委が認可 被災原発で初めて
3.11から取材を続けてきた東京新聞「原発のない国へ」のサイト。原発、避難住民、独自の放射能調査…。空撮写真や動画も交えてお伝えしていきます。

原子力20%は無理ではないがかなり厳しい

下図から明らかなように、30年時点で原子力の割合22%というのは、新設を除いたら考えうる最大ケースであることがわかります。全て40年で廃炉にせず、かつ現在未申請のものも含めて全て動かすという状況です。

未申請の原発が全部動かなかったとして、現在審査中の原発が全て再稼働、かつ60年まで稼働できるとすると、16%程度です。個人的には意外と多いなと思いました。

再稼働にあたっては、安全基準を満たせるかだけでなく、地元の合意形成など政治的要因も大きいため、コントロールが難しい問題ですが、40年ルールが形骸化していくとすれば、頑張って再稼働を推進すれば原子力の割合を10%程度まで上げることは可能ではないかと思いました。

スクロールしてページ下部の「LINEアイコン」をクリックすると新規投稿をラインでお知らせする設定ができます。メアドを入力して登録を押すと「メルマガ登録」もできます。有益な記事書けるよう努めます!

コメント

  1. これまた、すごくわかりやすいです。直リンクで使わせてもらいますね。「総合エネルギー統計」も確かに充実です。

タイトルとURLをコピーしました