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「エネルギー大転換」を掘り下げる「植物資源」編

だいぶ長丁場になってきましたが、引き続き「日本化学未来館」で開催されている「エネルギー大転換」を題材にエネルギーについて掘り下げていきます。

初回の記事はこちら↓

植物は人間にとって、食べ物にもエネルギーにもなるありがたい存在です。植物からは固体(木質ペレットなど)、液体(バイオエタノールなど)、気体(メタンガスなど)など様々な状態の燃料を作ることができます。

植物資源は、使い勝手のよさでは化石燃料と同等でありながら、化石燃料ほどCO2を出しません。しかし利用できる土地には限りがあることを考えると、どれだけの資源資源を森林や畑から得ることができるでしょうか。

  • 価格保証をすることで、燃料用作物を普及
  • 燃料用の作物生産は制限すべき
  • エネルギー用には稲わらや家畜のフンなど、食べ物ではないものを使うべき
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バイオマスは木質ペレットだけじゃない、色んなバイオマス

植物と動物から得られる生物資源のことをバイオマスと呼びます。食料やものづくりの原材料として利用した後、廃棄物を別のものに再利用し、さらに燃料としてエネルギー利用、というように、繰り返し利用してその力を使いつくすことができます。

国内には未利用のバイオマスが多く残されており、その有効活用が求められています。バイオマスというと木質ペレットを燃やして発電するバイオマス発電が思い浮かびますが、バイオマスと一口に言っても様々な種類があることがわかります。

農林水産省 食料産業局 「バイオマスの活用をめぐる状況」   令和2年1月
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/attach/pdf/index-77.pdf

こうして一覧表を見ていると、全体でも利用率は70%と高く、かつ発生抑制の取組みによって廃棄物系バイオマスは中長期的には減少傾向であるのが特徴的です。

廃棄物系バイオマスで目立って利用率が低いのは「食品廃棄物」ですが、量としても少ないですし、これは二次利用というよりもフードロス削減の取組みをITを駆使して取り組んだ方が筋がいいと思います。よって廃棄物系の更なるエネルギー利用は考えなくていいと思われます。

活路は「未利用系バイオマス」ですね。これももう少し詳しくみていきます。

こう見ていくと、使われていないものには使われていないだけの理由があるなと改めて思わされます。間伐材などはまさに未利用なわけですが、回収して運ぶコストのが高いから放置されてしまうわけですね。地産地消で小さなサイズでバイオマス利用が成り立つかが肝になりそうです。

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バイオマス発電の伸び

バイオマス発電の伸びは以下の図のように右肩上がりです。ちなみにこの容量はバイオマス燃料の熱量比60%程度以上の場合が抜粋されており、石炭火力発電の混焼は含んでいません。混焼というのは通常数%程度燃料の中にバイオマスを混ぜている火力発電です。

このグラフを見ると、2012年の固定価格買取制度の施行後の木質バイオマスの伸びが大きいことがわかります。

isep 環境エネルギー政策研究所「 バイオマス発電 」
https://www.isep.or.jp/jsr/2017report/chapter4/4-6

この固定価格買取制度ですが、バイオマスは複雑です。下図のようにその燃料によって買取価格が異なるからです。未利用材に2つ価格があるのは、発電出力が2000kWを超えるかの違いです。(発電出力が大きいほどスケールメリットが出て、買取価格は下がる)。

資源エネルギー庁 「バイオマス発電燃料の持続可能性の 確認方法を検討するに当たっての論点」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/biomass_sus_wg/pdf/001_03_00.pdf

この燃料のうち主戦力となるのが、一般木材等・バイオマス液体燃料です。FIT認定済の内訳をみると、そのうちほとんどがPKSとパーム油であることがわかります。

資源エネルギー庁 「バイオマス発電燃料の持続可能性の 確認方法を検討するに当たっての論点」 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/biomass_sus_wg/pdf/001_03_00.pdf

PKSというのは「やし殻」です。もともと廃棄されているものですが、発熱量が非常に高く、そのまま放置をすると火災の恐れがあるような材料なので、世界中からバイオマスの燃料として一躍注目を受けています。

日本にはヤシは基本的にないので、インドネシアやマレーシアから調達してくることになるのですが、近年は価格は高騰気味です。

そしてパーム油は、農園開発がボルネオ島などの熱帯林減少の最大要因であること、泥炭林開発などにより大量の温室効果ガスを排出すること、土地をめぐる紛争や深刻な労働問題を引き起こしていること、食料と競合することなど、発電燃料としては問題を抱えています。

それでも国際的に大量に流通している商品で燃料調達の制約が少なく、発電形態もすでに確立しているディーゼル発電であることから、パーム油発電事業が容易だと見られるからのようです。

未利用バイオマスを使った発電というイメージを持ってバイオマス発電を見ると、実態は輸入燃料頼みのところが多く、色々と問題もはらんでいることがわかってきました。
またエネルギーの安全保障という観点から見ても他の再エネと違って地産地消ではないですし、輸入に頼っている部分は化石燃料に近いものがあります。

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国内の再エネNo.2、熱利用もしたい

2018年の伸び率を見ると、太陽光は20%と圧倒的ですが、次に来るのがバイオマスの7%、風力の5%が続きます。

千葉大学倉阪研究室+認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所 「永続地帯 2018 年度版報告書」
file:///C:/Users/MasatoKaneko/Downloads/SustainableZone2018Report.pdf

バイオマスで発電するとエネルギー効率は3割程度しかないようです。つまり残りは熱として排出されてしまいます。ここを熱利用もできるようにすることが、バイオマス発電を考えたときのポイントとなるかもしれません。

地産地消を基本とすると、山地で熱需要を見つける必要があり、難しそうです。地域の温泉設備へ熱供給という事例があるようです。

意外とCO2排出量もある

燃料が燃やされ、CO2が大気に放出されるバイオマス発電が再エネと言われる所以は、もともと空気中にあるCO2を吸収し光合成によって得られた有機物を燃やすため、CO2が循環しているからです。

しかし、バイオマスの栽培、加工、輸送には化石燃料が必要で、バイオマス燃料を使うことでかえってCO2の排出量が増えてしまう場合もあります。

下図は僕も見てショックを受けたのですが、パーム油は原産国によって異なるものの、良くてLNG火力と同等、悪いとLNG火力よりもCO2排出量が多いと言う状況です。PKSはかなり少ないです。

補助金(FIT)をつけてバイオマス発電を導入して、かえってCO2が増えていたんじゃ何のためにやっているのかわかりませんね。裏を返すと、石炭はともかく火力といってもLNG火力はCO2排出力が多くないということかもしれません。

余すことなく使いつくすカスケード利用

木材のバイオマス利用を考えるとき、林業も深くかかわってきます。木材の利用の基本は「カスケード利用」です。まっすぐで大きな角材は当然のことながら丸太の中心からしか得られませんから、最初に切り出されます。残りからも順次用途毎に切り出され、最後に残るのがバイオマス発電用の燃料チップになるのです。

岐阜県林政部「岐阜県の森林・林業総合戦略」
http://www.japic.org/report/pdf/national_strategy_group17.pdf

基本的に燃料として燃やすのは最後に残っとカス、です。工場の残材や建設発生木材は既にほとんどがバイオマス利用がされている中で更に木質チップを増やすためには、一つは林業自体の発展が重要になります。



今回はバイオマスについてみてきました。従来の火力発電の技術を使いながら、燃料を変えるだけに近い感覚で再エネ導入できますし、何といっても天候に左右されず発電量が安定するのが強みです。

本来的には未利用の廃棄物や未利用材などを使って地産地消でバイオマス利用ができると理想だと思うのですが、実態としては固定価格買取制度を利用し、経済的な輸入バイオマス燃料に頼ったバイオマス発電が主流になってしまっています。

固定価格の年々の下落や燃料需要の高まりもあり、この流れはひと段落しつつあります。この先、本来的なバイオマス利用を伸ばせるかが注目です。
海に近いサイドは洋上風力、平地は太陽光、となると森林地域はバイオマスでしょう。上手く地域電力の担い手として成長してほしいです。

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