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「エネルギー大転換」を掘り下げる「グリッド(系統)」編

だいぶ長丁場になってきましたが、引き続き「日本化学未来館」で開催されている「エネルギー大転換」を題材にエネルギーについて掘り下げていきます。

初回の記事はこちら↓

電力やガスのネットワークは社会の隅々までエネルギーを行きわたらせる役割を担っています。これらのインフラは「グリッド」と呼ばれ、エネルギー転換を進める上では要となる存在です。

例えば太陽光発電や風力発電などの小規模な発電事業者が広範囲に分布しているときには、電力ネットワークを拡張する必要があります。また季節によって発電量が大きく変動しても、例えば余った電力でメタンガスを作り、ガスパイプラインで輸送して貯蔵することによって、再生可能エネルギーの利用を後押しできるでしょう。

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電力グリッド

日本全国の電力グリッドは繋がっている

日本の電力システムは10のエリアから成り立っています。各エリアで必要な電力は、基本的には同じエリアで発電されますが、沖縄を除く9エリア間は、「連携線」と呼ばれる電線で繋がっていて、全国規模の送電線ネットワークとなっています。

基本的には電気を送るには電線が必要で、当然電線は作るのにも維持するのにもコストがかかりますし、電線を通すことで電力の損失もあるので、できる限り発電した場所に近いところで電気を消費するのが良いです。

そうはいっても、電気が余ったり足りなくなったりした場合には、連携線を使うことで、エリアを超えて電気のやり取りができるようになっています。

連携線を積極的に活用すると、風力や太陽光と言った出力が変動する再生可能エネルギーをより多く増やしていくことができます。

下の図に設備容量(発電能力)と連携線の容量の関係を表した図を掲載しています。

https://twitter.com/YohYasuda/status/1218774882562924544?s=20

この図の色分けの部分を少し補足します。日本では、交流電流は、西日本では60Hz、東日本では50Hzと周波数が異なります。電圧も120Vと100Vで異なるわけですが、これがややこしい問題を引き起こしています。

電圧(周波数)の異なる電流を合流させることはできません。従ってその間には電圧を調整する「変圧器」が必要になります。その境目で図の赤と青が分かれています。

ちなみに余談ですが、なんでこんなややこしいことになったかというと、昔電力システムを欧米から輸入したとき、GE(米国)から技術を輸入した西日本とSimens(ドイツ)から技術を輸入した東日本で別れてしまったようです。ヨーロッパでは50Hz、アメリカでは60Hzだからです。

北海道だけ緑色ですが、これは、北海道と本州を結ぶ連携線は「直流」で接続されているからだと思われます。島が物理的に離れており、長距離送電する必要があるため、直流に変換して送電しています。この点はイギリスも同様と思われ、そのためヨーロッパの図も色が変わっていると理解してます。

連携線のカバー率はエリアによって大きく異なる

先ほどの図で、日本国内の連携線が各エリアの設備容量に対してどのくらいの割合を占めるか計算してみました。

エリア 設備容量 連携線容量 連携線カバー率 
北海道5.20.612%
東北14.2642%
東京53.36.612%
中部24417%
北陸5.11.937%
関西26.69.636%
中国10.68.176%
四国5.32.649%
九州15.42.818%

これを見ると、エリアにより大きく割合が異なり、特にエッジに位置する北海道と九州は低いことがわかります。また、東京はそもそも発電量が多い中で、西は変圧しないと連携できず、実質東北頼みになっており、低い値になっています。

土地が広く風況の良い北海道、日照量が多く太陽光の開発が進む九州、と日本のエッジは再エネ開発のエッジを行く地域でもあります。しかしながら連携線の観点からいうと、再エネ導入が進んだ時の安定性には課題があります。

一方ヨーロッパの方を見てみますと、ばらつきに大きな差があります。デンマークやポーランドはもう少し連携できる国があると思うので全部網羅できていないので話から外します。

設備容量連携線容量連携線カバー率
英国6946%
ベルギー132.922%
オランダ173.521%
フランス871416%
ドイツ8125.031%
スペイン375.515%
ポルトガル83.139%
チェコ103.939%
オーストリア1115.2138%
スイス1012.7127%
イタリア53713%
デンマーク20.3518%
ポーランド233.515%
アイルランド5120%

連携線が周辺国と繋がっていることが、再エネ普及にどのくらい貢献しているのか、比較してみようと思います。再エネ割合に関しては19年は以下のようなデータを引っ張ってきました。

自然エネルギー財団:統計|国際エネルギー「世界の電力」電力消費量に占める自然エネルギーの割合 19年
https://www.renewable-ei.org/statistics/international/
isep 環境エネルギー政策研究所:2018年(暦年)の国内の自然エネルギー電力の割合
https://www.isep.or.jp/archives/library/11784

連携線カバー率と再エネ普及率の関連はイマイチ

このうち水力は大雑把に言えば安定電源なので、不安定電源である太陽光と風力の割合との関係を見てみます。

こう見ると、連携線カバー率と不安定再エネ比率の関係の相関は思ったほどありません。ただ、連携線カバー率が高い欧州の国は再エネ比率もやや高めと言えそうです。

それ以上に、日本が連携線カバー率に関わらず不安定再エネ比率がかなり低いと思いました。国土が狭い中で適地が少ないという事情もあるかもしれませんが、系統の制約という言い訳は通用しないかなと。

今の系統をもっと柔軟に使って再エネ普及をする手立てはありそうです。

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ガスグリッド

日本の電力とガスのネットワークは全く違う

ガスパイプラインもエネルギー供給のための基盤として重要です。日本には、全国規模のネットワークはありませんが、ヨーロッパはでは天然ガスの生産地から直接パイプラインで国境を越えてガスが供給されています。

インフラネットワークという観点から電力とガスを比較すると随分大きな違いがあることがわかります。

資源エネルギー庁:ガス事業制度検討ワーキンググループ「ガスシステム改革の現状と今後の課題について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/gas_jigyo_wg/pdf/001_05_00.pdf

こちら「ガス事業制度検討ワーキンググループ」という経産省のエネ庁で行われている検討会から引っ張ってきたのですが、こういった検討が18年から行われていることを初めて知りました。エネルギーは電力だけじゃないわけですが、私自身は電力ばかりに関心が行っていたなと気づかされました。

簡潔にポイントだと思った違いを抜粋すると

  • ガスの市場規模は電力の約1/3
  • 都市ガスの普及率は半分ほど、LPガスと電力が競合になる
  • エリアごとの寡占がなく、200もの中小事業者がひしめき合う。
  • 安全性の感度が電力より遥かに大きい

確かに安全性は大きく違うなと思いました。電力の場合、電線が切れても停電で済みますが、ガスの場合はガス漏れですからね。

以下の地図を見ても、いわゆる太平洋ベルトのラインと、北陸から東北にかけてだけがガス網が整備されていることがわかります。

資源エネルギー庁:ガス事業制度検討ワーキンググループ「ガスシステム改革の現状と今後の課題について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/gas_jigyo_wg/pdf/001_05_00.pdf

ガスラインに水素を流すのは簡単ではない

ドイツでは余った電力を水素やメタンなどに変換して(Power to Gas)、パイプラインに供給することも行われています。

これに絡んで日本では、「熱量バンド制」が検討されているようです。

熱量バンド制:ガスの単位体積当たり熱量の標準値(毎月の算術平均値の最低値)を定め、熱量の変動を制限する仕組み。調達リソースの多様化、熱量調整設備のコスト抑制、導管の相互接続による供給安定性の向上といったメリットが見込まれる。

東京電力エナジーパートナー株式会社「熱量バンド制導入の必要性について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/gas_jigyo_wg/pdf/011_06_00.pdf

ガスというのは、一口に言っても色んな成分があり、LNGとLPGなどその化学成分により熱量が異なります。熱量が大きく変わるとガスを使う機器の動き方が変わってしまいますし、安全性にも影響があります。そこでガス会社がそれぞれ熱量の維持にご尽力されているようです。

これを熱量をある幅に収めるように規格化することによって、ガス会社間のガス管を連結させたり、色んな成分のガスを混ぜられるようになったりという効果が期待できるそうです。

以下は実際に熱量にどのくらいの幅のバンドを設けたら、どんな影響が生まれるかというのを調査した結果です。これを見るといわゆるコンロなどの燃焼機器に関しての安全性はあまり影響無さそうですが、そのほか性能や品質面での影響は避けられないように見えます。

±2%程度の幅に収めた上で、空調機は空調機の機器側が調整するような形で業界全体として制度化の方向に動く必要がありそうです。

資源エネルギー庁:ガス事業制度検討ワーキンググループ「熱量バンド制に関する機器調査への影響調査報告」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/gas_jigyo_wg/pdf/011_04_00.pdf

欧米のパイプライン

翻ってヨーロッパを見てみると、国を跨いだガスパイプライン網が構築されていることがわかります。

ロシアの天然ガスや北海油田を欧州諸国が国を跨いで共有していることがここに表れていると思います。

ドイツで既に水素がパイプライン流せているのは、先に挙げたバンド幅が広いからできるようです。

日本はそもそも石油・天然ガス資源が国土に無いので、ガスパイプラインが発達しなかったのだろうと思いました。

エネ百科「ヨーロッパにおける 天然ガスのパイプライン網」
https://www.ene100.jp/zumen/1-1-12

分散化&脱炭素化時代のガスの在り方や如何に

再生可能エネルギーが普及していくという今の世の中は、分散化の時代と言われます。これは、巨大な発電タービンを抱える原子力や火力発電所の大電力を巨大な電力ネットワークを介して供給するのではなく、太陽光や風力といった小型の電源で地産地消をしていくという変化を意味しています。

電力網はかなり整備されているため、分散電源化していくことは既存のインフラを活用しないことに繋がるので、設備利用率が下がるという観点でも、既得権益層が黙っていないという観点でもハードルが高いです。

しかしガスの特徴は、もともとネットワークが脆弱でプロパンは既に分散化しているとも言えます。分散化したエネルギーシステムを考えるうえでは、追い風なのではないかと思いました。

化石燃料由来のガスでは温室効果ガスを発生してしまうため、再エネから水素を作り、その水素をプロパンのバリューチェーンを活用して流通させていく、わかりやすく言うとガスボンベで流通させていく、というのはアリなのかもしれないと感じました。

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