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一般家庭の一次エネルギーを太陽光で賄うことを考えてみる その1

再生可能エネルギーのポテンシャルはで生活する未来はどんなものなのか、身近な一般家庭の生活をイメージしながら考えてみたいと思います。再エネといってもどこでも発電できる太陽光が現実的なオプションです。

また、以前触れたように家庭部門はエネルギー消費全体の14%しかなく、メインは産業セクターです。逆に言えば最もエネルギー密度が低くてもエネルギーシステムが成立するためまずはここからだと考えます。

再エネは経済性と不安定性がよく議論されるのですが、エネルギー密度が非常に小さいため、どのくらい土地が必要になるのかというのも重要だと思います。産業は膨大なエネルギーを消費するので、今回は家庭用というエネルギー密度が小さくて済む条件で考えてみたいと思います。

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エネルギー密度の観点から見た電源

原子力発電

最もエネルギー密度の大きい原子力発電所の基本単位が100万kWと膨大なのですが、発電所の敷地面積は0.6km2とのことです。

原子力の稼働率は以前触れたように稼働率7割ほどなので、計算すると1MWh月間発電するのに必要な敷地は1.2[m2]になります。ちなみに月間1MWhはオール電化の一般家庭の消費電力です。わずか1m四方の面積しか必要ないというのは衝撃的です、さすが原子力。

資源エネルギー庁:原発のコストを考える
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/nuclear/nuclearcost.html

火力(LNGコンバインド)発電

火力発電の中でも新しくて二酸化炭素の排出量も少なくて効率もいい(でもちょっとお高い)LNGコンバインドサイクルプラントで見てみます。調べても中々敷地面積が出てこないので、以下のJERAのHPで個別プラントを見てみました。同じLNGでもかなりばらつきがあり、単位面積あたりの設備容量を見ると、3~8kW/m2くらいでした。ここでは平均して5kW/m2とします。

発電所一覧 | 火力発電所 | JERA
「発電所一覧 | 火力発電所」ページ。株式会社JERAは、東京電力FPおよび中部電力の燃料上流・調達から発電までのサプライチェーン全体に係る事業を担う合弁会社です。

1MWh月間発電するために必要な敷地面積は38.0m2、原子力と比べると30倍大きいですが、約6m四方です。一軒家ならば家の敷地にあったとしても許容範囲といったところでしょうか。

水力発電

水力はダムのサイズがでかすぎて考えるのが難しいです。水力発電は水の位置エネルギーを利用しているので、じゃあ水がどのくらい必要なのかということは少なくともわかりそうです。何mの高さからどれくらいの水の量を落とし続ければ年間1MWh発電できるでしょうか。

1m3の水を2mの高さから落としたときのエネルギーは、

(水の体積)1m3×(密度)1000kg/m3×(重力加速度)9.8m×(落差)2m×(変換効率)80%=15680J

単位換算して月間のエネルギーを計算すると、

15680J÷3600×24(時間)×30(日)=3.14kWh

従って、1MWhのエネルギーを得るためには、約319m3の水を2mの高さから落とし続けて水車で発電する必要があります。2mの落差は2階をイメージしてみたのですが、必要な水の量は319m3とは、1辺5.6mの立方体です。大きな水の塊を想像しました。

例え近くに小川があってもマイクロ水力発電ではこんな水のエネルギーは確保できません。立地の制約が大きいなあと改めて思わされますが、水力発電というのはエネルギー密度が低いことがわかります。

風力発電

風車を家に置くのは現実的ではないのですが、エネルギー密度という観点から触れてみたいと思います。

以前は20kW以下という括りでFIT対象になっていましたが、この規模ではいつまでも補助金なくして成立しないことがわかり今は廃止されています。理由は以下の記事を見ると、設備利用率は8%ほどにしかならなかったからとのこと。

この規模はちょうど家のサイズに合うくらいの年間消費電力に相当するので、イメージしやすいのですが、電気代がものすごい高くなるのでアウトです。

「小型風力」がなくなったのはなぜか – エコめがねエネルギーBLOG
これまで、FIT価格が高値に設定されていた20kW以下の「小型風力発電」。 それが2018年度から大型の風力発電と同じ区分で取り扱われるようになり、これまで「小型風力発電」と呼んでいた設備のFIT価格は大幅に低下することになりまし

一般的な陸上風力のラインナップのデータを見ながら、どのくらいのエネルギー密度が計算してみます。なお、設備利用率は15%とします。また必要敷地面積は、「ローター径分の長さを半径とした円」と仮定しました。

[Unison] Wind Power, Wind Turbine , Forging
設備容量2075020004000kW
稼働率8%15%15%15%
月間1.181.0216.0432.0MWh
トーター径10.85793136m
地上部面積36610,20727,17258,107m2
 1MWhあたり335126126135m2

こう見ると、20kWは置いておいて、大型はスケールが大きくなっても1MWhの発電量を得るための必要敷地は変わらないことがわかりました。

だいたい130m2なので、火力発電の3倍くらいです。空気のエネルギー密度はとても小さいですが、上空を使えるので、敷地面積の消費量はそれほど大きくなりません。ただし、複数風車を建てようとすると風が乱れるため注意が必要ですね。


エコめがね:「小型風力」がなくなったのはなぜか

太陽光発電

最後に本丸の太陽光発電です。以下の「ソーラーシンギュラリティの影響度等に関する調査」がとても参考になる資料だったのでここから抜粋します。

ソーラーシンギュラリティの影響度等に関する調査:平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 (経済産業省)
ソーラーシンギュラリティの影響度等に関する調査:平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査-レポートの発表元:経済産業省

家の屋根の形により屋根における太陽光パネルの大きさが変わるのですがそれをここで試算しています。ここでは戸数の多い、「寄棟・切妻」タイプの屋根を想定して考えます。

資源エネルギー庁:平成28年度新エネルギー等導入促進基礎調査 P.129
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000305.pdf

太陽光パネルそのものの必要面積は、1kWhあたり6.67m2、太陽光の稼働率は12%ほどなので、月間1MWhを賄おうとすると、77.2m2必要だということがわかります。

そして上の表によると、これだけの屋根面積を持つ家の敷地面積はなんと150m2以上…この表の一番下にあることからもわかる通り、これは相当大きな一軒家でしか成り立ちません。太陽光を一次エネルギーに頼るのはコスト以前にエネルギー密度の壁が超えられないように見えます。

もっとも、オール電化をあきらめてガスも使うとすると、電気の消費量は半分ほどまで落ちると考えられるので、必要面積は38mほどまで落ち、ボリュームゾーンである敷地面積50~74m2の家でも屋根上に設置できます。

この面積は火力の二倍です。意外と違いがないことに驚きました。風力にせよ太陽光にせよ、エネルギー密度自体は非常に低いのですが、火力発電所は燃料のエネルギー密度は高くても付帯設備含めてもろもろかなりの面積が必要になります。

太陽光や風力は設備の大部分が発電に寄与する部分で占められているので結果的にエネルギー密度の差はそこまで大きくないということがわかります。
そう考えると、不安定さの解消はいずれにせよ必要ですが、ある程度まとまった量の分散電源を消費地である家庭に設置するのはリーズナブルに見えてきます。系統寸断による停電のリスクや、エネルギー安全保障といった面ではむしろ安定です。

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太陽光発電の置き方を屋根から拡大

エネルギー密度の観点から太陽光で一般家庭を賄えるのか検討してみましたが、屋根上に設置する前提として考えると、全てのエネルギーを電気に頼る前提で考えた時には難しいことがわかりました。成立するのは、150m2以上の敷地がある全体の7.5%ほどの住宅のみです。

しかし家の敷地は建物だけではありません。敷地面積を見てみると、違った景色が見えてきます。以下は政府統計e-statから引っ張ってきたデータの抜粋ですが(小さくてすいません)、まず全国の総戸数はおよそ3千万戸です。

このうち、一軒家の持ち家が2.6千万戸と大半を占めるので、(都市にいると集合住宅が当たり前の感覚になりますが)、まだまだ全国にはたくさんの一軒家があることがわかります。

住宅・土地統計調査 / 平成30年住宅・土地統計調査 / 主要統計表
第32表 住宅の所有の関係(5区分),建て方(2区分)別敷地面積
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200522&tstat=000001127155&cycle=0&tclass1=000001133386&stat_infid=000031904330

敷地面積が200m2以上くらいあれば、先に計算した77m2の太陽光パネル設置面積は確保できるのではないかと考えました。これは屋根上だけではなく地上にも置くということを前提にしています。

そして200m2以上の敷地面積を持つ持ち家率は、全体3千万個のうち41%にものぼります。これだけの一軒家にその家の一次エネルギーを賄う分の太陽光パネルの設置の可能性があるというのは希望が持てると思いました。

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系統との接続、安定性の問題

現在の家庭用太陽光パネルの導入は、「家の屋根に設置し、発電した分は固定価格買取制度に則って電力会社に高いお値段で買ってもらい、足りない分は従来通り電力会社から買う」、という大変恵まれた条件があるからこそ進んでいます。

しかしこれは
「発電したいときだけ発電してOK、需要と供給のバランスは電力会社でやりますんで」という不平等条約なわけで、太陽光を普及させるための時限措置です。電力システム全体を考えると分散電源に好き勝手に発電されると調整する側はとてもしんどい。

そのため分散電源で賄うなら系統に頼るのはやめてもらう、というのがあるべき姿なのかなと思います。この点土地がたくさんあるエリアというのは、人口密度が低く、送電線を引くコストが高くつくので、送配電網の利用率が下がり採算が取りにくくなります。過疎エリアは分散電源で系統から切り離せるとWIN-WINではないかと思われます。

しかしながら、99%分散電源だけど、1%系統に頼るとなった時点で、送配電網自体は必要になってしまうため、最後は系統に頼るという発想は電力システム全体のコストを押し上げていしまいます。中途半端なことをするなら、系統頼みのほうがいいわけです。

分散電源が普及するほど電力の販売量は減ってしまう(収入は減る)のに配送電網は維持し続けなければならなくなってしまうからです。

エネルギーを総量としての確保ができるという前提がある程度の規模で成立することがわかってので、次の問題は不安定さの解消をどうやるかという一番の難問です。これは周期毎に蓄電方法を変え、組み合わせていくのがいいのかなと思っています。

つづきはこちら


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