タイトル

水力発電のメリットとデメリット、今後の展望は?

経済発展を支えてきた電力、黎明期に大電力を供給したのが水力発電でした。その後化石燃料に主役の座を明け渡して久しく時が経ちますが、再生可能エネルギーへの転換という流れの中で再び注目を浴びています。

制約条件が厳しいというデメリットがあり、立地が全てと言ってもいいほどですが、立地が恵まれれば安価でクリーンな電力というメリットを享受できます。また太陽光や風力といった分散電源が主体となってきた昨今では、蓄電池としての役割も重要になってきました。そんな多様な役割が求められる水力発電のメリットとデメリットを見ながら、今後の展望を考えていきます。

前段としてのエネルギー収支や、代替燃料についての話や、再生可能エネルギーのポテンシャルについては以下の記事でまとめています。

スポンサーリンク

水力発電のメリットとデメリット

水力は、地球上の水の循環によって生じる安定して得られるエネルギー源です。しかし水力エネルギーを利用できる場所は限られており、水力発電には大きな川もしくは流れの速い川が必要です。

水力発電のメリット

従来型の一般水力発電のメリットはなんと言ってもそのコストの安さでしょう。
以下のコスト試算を見ても、全電源の中で、原子力と並ぶ最低水準にあるのが一般水力です。
初期コストとしてのダム建設費は大きなものになりますが、ランニングコストが小さく、機器の故障も極めて少ないです。

加えて二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーでもあり、再生可能エネルギーであるにも関わらず発電量のコントロールも可能と、万能と思えるほどのメリットがあります。

蓄電池としての役割を果たす揚水発電

通常の水力発電は、流れてくる水の位置エネルギーを使って発電するという一方向の発電ですが、揚水発電は発電所の上部と下部に大きな池(調整池)をつくります。

昼間の電力需要の多いときは上の調整池から下の調整池に水を落として発電し、発電に使った水は下部の調整池に貯めておき、夜間は余剰電力を使って右下の池に溜まった水を左上の池に汲み上げます。

こうすることで水の位置でまるで蓄電池のように使えるのが揚水発電です。

再生可能エネルギーの主力電源である太陽光発電の割合が増えて主体となってくると、夜間を中心に太陽光が無い時間帯において発電が可能な再生可能エネルギーである水力発電は重宝されることになります。

水力発電のデメリット

日本における水力発電の発電電力量は、以下のリンク先「電力調査統計」によれば、揚水式を含めて845億kWh(10.0%)です(2020年度)。先進国日本ではすでに水力発電の適地では開発を終えていますが、それでも全体の1/10しか賄えていません。国土の2/3が山林で水資源に恵まれている日本でも、膨大な電力需要に答えるのは容易ではありません。

電力調査統計表 過去のデータ|資源エネルギー庁
資源エネルギー庁のホームページです。電力調査統計表 過去のデータ。

また水力発電の発電量は貯水池の大きさで決まるため、発電量を増やそうとするほど大規模な開発が必要になり、環境破壊が起こります。

環境に優しい再生可能エネルギーを増やそうとして環境破壊をすることになるという矛盾があります。
環境への悪影響という視点では、水のエネルギーを発電に利用する分水の勢いが落ちるため、下流に流れる川の勢いが小さくなり、河川の枯渇や、自然の流れを遮断したことによる魚や小動物など生態系への影響等が起きます。

スポンサーリンク

日本における水力発電の今後の展望

日本はまだまだ水力のポテンシャルがある

国内には700基の水力発電用のダムがあります。現在、全電力の8%を賄っていますが、運用方法の工夫やかさ上げ工事発電電力量を増やせる可能性があります。

加えて、河川や農業用水などの水の流れをそのまま利用する中小水力発電の資源量を合わせると、水力発電には現在の2.6倍のポテンシャルがあります。

水力発電が日本を救うー今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる 竹村公太郎

ダムの嵩上げは有望

そもそもダムには複数の用途があります。

  • 家庭や工場、農業、発電に水を使うのが「利水」
  • 川の堤防の決壊から守るのご「治水」

双方の目的を果たそうとするのが多目的ダムになります。国土の小さい日本では、2つの矛盾した目的を持つ多目的ダムが多く、河川法の制約でダムの容量の半分までしか水を貯めることができません。例えば、治水のために雨量の多い時期に放水して敢えて貯めないということをします。

そこでこの本の中で挙げられているのが、ダムの嵩上げです。は面白いなと思うのは、発電量を倍に増やしても、新設の「工事費用分」程度でまかなえるという記載です。

はて、新設分丸々かかるのか?そりゃ高くないか?と思うのですが、ダム建設にあたっては、2/3程度が周辺の村の水没の補填費用に充てられるようで、工事費だけで済むなら安いもののようです。

以下のリンク先を見ていると、建設中も既存のダムとして機能を損なうわけにはいかないため、ダムを運用しながら工事しなければならない点が技術的な課題になるようです。

http://www.pwrc.or.jp/thesis_shouroku/thesis_pdf/1402-P006-009_enomura.pdf

多目的ダムの性質上、有効活用しきれていない場合はダムの嵩上げは有効だと思います。そうでない場合も、揚水発電で電池を貯める用途まで拡張すると既存ダムの活用の幅は広いと感じました。

中小水力の伸び

一般水力(揚水発電除く)の2016年における設備容量は22,724[MW]、発電所数は2,287、そのうち1万kW以下の中小水力の設備容量と発電所数の推移は以下の図の通りです。

自然エネルギー白書2017: https://www.isep.or.jp/jsr/2017report/chapter4/4-4

こうみると全体に占める中小水力の割合は、設備容量ベースでみると838万kW/2272万kW=37%です。200kW以下のいわゆるマイクロ水力・小水力に分類される部分は、FIT制度移行急速に基数を伸ばしていますが、全体にしめる設備容量はゼロに等しい水準しかありません。

一方で1000~10000kWクラスの伸びが近年の水力全体の成長を牽引していると言えそうです。

小水力の課題はコストと水利権

もう一つのポテンシャルは小水力です。こちらは一番の課題はコストだと思います。以下は前回も出した発電方法毎の発電コストになりますが、一般水力と比べ、小水力は発電量あたり2~2.5倍程度コストが増えることがわかります。やはり水力は火力や原子力と同じようにスケールメリットが出る発電方法なのでこの点はやむを得ません。

また水利権の問題も無視できません。洋上風力に通ずるところもあると思うのですが、河川や海といった公共の場は、自らの土地とすることができないため、水利用、場所利用のための権利取得が非常に大変です。

2013年の河川法改正により、水利権取得のための手続きは簡素化されたようですが、小水力の場合農業用地といった何かに既に使われている場所に追設するケースが多いため、既存の権利者との調整で難航することが多々あるようです。

冒頭取り上げたとおり、中小水力のポテンシャルは大きいため、スケールメリットが大きい水力発電において、如何に小さいサイズでも経済性を出せるよう標準化、コストダウンしていくかがポイントだと思われます。

P.S. 水力に関わるおすすめの本と番組のご紹介

『水力発電が日本を救うー今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる』竹村公太郎 boompanchのレビュー – ブクログ

boompanchさんの感想・レビュー
boompanchさんの竹村公太郎『水力発電が日本を救うー今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる』についてのレビュ...

プロジェクトX 挑戦者たち シリーズ黒四ダム

あの中島みゆきの地上の星がいつになっても脳裏から離れない名番組「プロジェクトX」の中でもまさにプロジェクトXの真骨頂ともいうべきエピソードがこの黒四ダムの話でしょう。

秘境の地にある現場までのアクセス道路の難工事、膨大なコンクリートでダムの壁を作る建設工事と2回に分けて黒四ダム完成までの死闘を描いています。

関西電力が電力不足に対抗するために打った起死回生の一手、この時代に水力発電がどれだけ人々の生活を支えたのかよくわかります。

スクロールしてページ下部の「LINEアイコン」をクリックすると新規投稿をラインでお知らせする設定ができます。メアドを入力して登録を押すと「メルマガ登録」もできます。有益な記事書けるよう努めます!

コメント

タイトルとURLをコピーしました