タイトル

クリーンなエネルギーの証書取引 ~高度化法と非化石価値取引市場~

電力システム改革の全体像をおさらいしたものの(以下の記事)、各論に入ると内容が膨大でやや途方に暮れていました。とはいえ、少しずつ切り込んでいかなくては始まりません。ということで今回はどうやって二酸化炭素を排出しない電源をふやしていくのか?すなわち「非化石価値の証書取引」という観点でまとめていきます。

本テーマは目下議論が進んでいるところでもあるため、新しい内容があれば更新していきます。
20/12/4 更新!

スポンサーリンク

高度化法 ~電気を売る人にCO2フリーな電気を強制的に混ぜさせる~

高度化法、正式名称「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」は、2009年7月に成立した、電気・ガスといったエネルギー供給事業者に対して、再エネや原子力といった非化石(化石燃料に由来しない)エネルギー源の利用促進のための法律です。

エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律 | e-Gov法令検索
電子政府の総合窓口(e-Gov)。法令(憲法・法律・政令・勅令・府省令・規則)の内容を検索して提供します。

この第五条に以下のような文言があり、追って経産省大臣によって、事業者の判断のための基準を示すとしています。

第五条 経済産業大臣は、特定エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源
の利用の適切かつ有効な実施を図るため、特定エネルギー供給事業者が行う事
業ごとに、非化石エネルギー源の利用の目標及び次に掲げる事項に関し、特定
エネルギー供給事業者の判断の基準となるべき事項を定め、これを公表する

のとする。
一 推進すべき非化石エネルギー源の利用の実施方法に関する事項
二 再生生可能エネルギー源の利用に係る費用の負担の方法その他の再生可能エ
ネルギー源の円滑な利用の実効の確保に関する事項
三 その他非化石エネルギー源の利用の目標を達成するために計画的に取り組
むべき措置
に関する事項

エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律 関係条文集
https://www.enecho.meti.go.jp/notice/topics/017/pdf/topics_017_002.pdf

そしてこれをもとに告示されたのが「非化石エネルギー源の利用に関する電気事業者の判断基準(平成28年)」です。ここで述べられているのが以下の文章で、2030年に44%というのがポイントです。

小売電気事業者は、令和12年度(2030年度)における非化石電源比率を44%以上とすることを目標とし、既に非化石電源比率の目標を達成した電気事業者であっても、非化石電源比率の更なる向上への努力を求めるとされております。

資源エネルギー庁:https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/nonfossil/koudokahou/200309a.html

また、この目標が課されるのは誰なのか?という部分については、「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律施行令」に以下のように示されております。

(供給する電気等の供給量の要件)

第七条 第七条第一項の政令で定める要件は、次のとおりとする。

 特定エネルギー供給事業者のうち第五条第一号に掲げる事業を行うものにあっては、前事業年度におけるその供給する電気の供給量が五億キロワット時以上であること。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=421CO0000000222

つまり、法的な拘束力は電気を需要家へ売る「小売」に課すことで、小売が間接的に小売から求められる非化石電源の割合を増やしていく、というような戦略であることがわかります。

加えて、全小売に課すわけではなく、ある程度大きな電力販売量を持つ小売(5億kWh以上)を対象にしていることもわかります。

スポンサーリンク

審議会での中間目標値の設定

とはいえ、30年にいきなり蓋を開けて44%になってますか?と振るのは無計画なので、中間目標というものを定めています。これを議論しているのが、エネ庁傘下、「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会」です。
なお、この5億kWh以上販売している大規模小売の事業者は現在のところ以下の61社です(20年度)

では次にこの審議会での議論を見てみたいと思います。

さて、2030年に非化石電源比率44%と決まったわけですが、18年22.8%の比率をどのように計画的に向上させていくのか、ということが焦点になります。この議論を行っているのが、「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会」になります。

基本的には直線的にその比率を高めていきたいというイメージがありつつも、非化石証書の流通量が少ないとそれも困難となるため、「激変緩和措置」として、暫定的な緩和措置を設けて目標値を定めています。

また事業者ごとにベースとなる非化石比率が異なるため、どの事業者にも努力を促すため、目標値を事業者毎に変えるためのGF(グランドファザリング)量を設け、対象事業者がそれぞれ現時点から努力を求める形となっています。ここでは詳細触れませんが、個社ごとの目標値算定プロセスは複雑極まりないのですが、こうして2020年から目標が課されることになっています。

経済産業省・第44回 制度検討作業部会:高度化法の中間評価の基準となる目標値の設定について
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/044_03_01.pdf
スポンサーリンク

非化石市場の設計と取引の実態

非化石価値の分類

次にどうやって非化石割合を上げていくの?という話がございます。

電力(kWh)とは別に「非化石証書(kWh単価が設定)」を買うことで、非化石価値を市場(JEPXの非化石価値取引市場)で購入できる仕組みになっています。

ややこしいのが非化石証書の種類です。以下のように、「再エネ指定」かどうか「FIT」かどうかで分類されており理解を困難にしております。対象電源のところを見ていただくとそれぞれメインの電源が違うのでわかりやすいと思います。

経済産業省:非化石価値取引市場について
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/044_03_02.pdf

なぜややこしくなるのかというと、FIT制度に起因します。FITは再エネ電源を建設したとき、その電力を政府が決めた単価で全て買い取ります、という制度です。その負担額は電気を購入した需要家みなさんに乗っているわけですが、その時点で十分補助を受けていると考えられます。

一方FIT電源も再エネなので、非化石価値があります。十分負担額を補填されているため、その非化石価値は費用負担調整期間(GIO)が一括して市場に売りに出し、そこで得られた収益をFITの負担金の軽減に活用しようということになっているのです。これが「再エネ指定FIT非化石価値」に該当します

一方で、FITというのは期間が決まっています。10kW以下の太陽光は10年のため、FIT期間が終了した「卒FIT」電源が存在するのですが、こうした電源は非化石価値が発電事業者に戻ってきます。また、FIT指定でない再エネとしては他にも水力などが挙げられ、これらは発電事業者が自由に売れます。売り方としては、市場(JEPX)以外にも直接小売事業者に売る相対取引もあります。これが「再エネ指定非FIT非化石価値」です。

最後に残るのが、再エネではない非化石価値なのですが、これはずばり原子力が該当します。こちらも発電事業者にその価値が帰属し、市場、相対取引によって売ることができます。これが「再エネ非指定非FIT非化石価値」です。

非化石価値の証書取引量

非化石市場なのですが、毎年度4回オークションが行われています。今年度から目標値が課されたこともあり、この11月から取引量が大幅に増加しています。

経済産業省:非化石価値取引市場について
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/044_03_02.pdf

では先程分類した証書の種類の中でどれがどのくらい約定しているのか?またいくらなのか?という部分を見てみますと、どの分類もまとまった量の取引があることがわかります。また価格については1.1-1.3円/kWhとなっています。こう見ると、原子力の恩恵がよくわかります。

経済産業省:非化石価値取引市場について
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/044_03_02.pdf

今後はより非化石価値の証書取引量が増加し、非化石電源のニーズも上がってくると考えられ、活性化していくことが考えられます。制度検討作業部会の議論はウォッチしていく必要があります。

スクロールしてページ下部の「LINEアイコン」をクリックすると新規投稿をラインでお知らせする設定ができます。メアドを入力して登録を押すと「メルマガ登録」もできます。有益な記事書けるよう努めます!

コメント

タイトルとURLをコピーしました