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非化石証書とは? 脱炭素エネルギーを取引する市場の仕組み

脱炭素化に向け、非化石電源、再生可能エネルギーを調達する動きが日々加速しております。再生可能エネルギーを調達するというのは具体的にどういうことなのでしょうか?「100%再エネです!」という話も珍しくなくなってきましたが、昼夜を問わず不安定な再エネを調達することを可能にしている背後には、それを可能にする仕組みがあります。今回はその鍵となる非化石証書とは何か?どんな仕組みで運用されているのかについてまとめていきます。

本テーマは目下議論が進んでいるところでもあるため、新しい内容は随時更新していきます。

非化石証書というのは電力市場の一部になるのですが、この電力市場の全体像については以下でまとめております。

またそのさらに前段、電力自由化に向けた電力システム改革の全体像については、以下でまとめております。

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非化石証書導入のきっかけとなった高度化法

高度化法、正式名称「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」は、2009年7月に成立した、電気・ガスといったエネルギー供給事業者に対して、再エネや原子力といった非化石(化石燃料に由来しない)エネルギー源の利用促進のための法律です。

エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律 | e-Gov法令検索
電子政府の総合窓口(e-Gov)。法令(憲法・法律・政令・勅令・府省令・規則)の内容を検索して提供します。

この第五条に以下のような文言があり、追って経産省大臣によって、事業者の判断のための基準を示すとしています。

第五条 経済産業大臣は、特定エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源
の利用の適切かつ有効な実施を図るため、特定エネルギー供給事業者が行う事
業ごとに、非化石エネルギー源の利用の目標及び次に掲げる事項に関し、特定
エネルギー供給事業者の判断の基準となるべき事項を定め、これを公表する

のとする。
一 推進すべき非化石エネルギー源の利用の実施方法に関する事項
二 再生生可能エネルギー源の利用に係る費用の負担の方法その他の再生可能エ
ネルギー源の円滑な利用の実効の確保に関する事項
三 その他非化石エネルギー源の利用の目標を達成するために計画的に取り組
むべき措置
に関する事項

エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律 関係条文集
https://www.enecho.meti.go.jp/notice/topics/017/pdf/topics_017_002.pdf

そしてこれをもとに告示されたのが「非化石エネルギー源の利用に関する電気事業者の判断基準(平成28年)」です。ここで述べられているのが以下の文章で、2030年に44%というのがポイントです。

小売電気事業者は、令和12年度(2030年度)における非化石電源比率を44%以上とすることを目標とし、既に非化石電源比率の目標を達成した電気事業者であっても、非化石電源比率の更なる向上への努力を求めるとされております。

資源エネルギー庁:https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/nonfossil/koudokahou/200309a.html

また、この目標が課されるのは誰なのか?という部分については、「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律施行令」に以下のように示されております。

(供給する電気等の供給量の要件)

第七条 第七条第一項の政令で定める要件は、次のとおりとする。

 特定エネルギー供給事業者のうち第五条第一号に掲げる事業を行うものにあっては、前事業年度におけるその供給する電気の供給量が五億キロワット時以上であること。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=421CO0000000222

つまり、法的な拘束力は電気を需要家へ売る「小売」に課すことで、小売が間接的に小売から求められる非化石電源の割合を増やしていく、というような戦略であることがわかります。

加えて、全小売に課すわけではなく、ある程度大きな電力販売量を持つ小売(5億kWh以上)を対象にしていることもわかります。

審議会での中間目標値の設定

とはいえ、30年にいきなり蓋を開けて44%になってますか?と振るのは無計画なので、中間目標というものを定めています。これを議論しているのが、エネ庁傘下、「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会」です。
なお、この5億kWh以上販売している大規模小売の事業者は現在のところ以下の61社です(20年度)

では次にこの審議会での議論を見てみたいと思います。

さて、2030年に非化石電源比率44%と決まったわけですが、18年22.8%の比率をどのように計画的に向上させていくのか、ということが焦点になります。この議論を行っているのが、「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会」になります。

基本的には直線的にその比率を高めていきたいというイメージがありつつも、非化石証書の流通量が少ないとそれも困難となるため、「激変緩和措置」として、暫定的な緩和措置を設けて目標値を定めています。

また事業者ごとにベースとなる非化石比率が異なるため、どの事業者にも努力を促すため、目標値を事業者毎に変えるためのGF(グランドファザリング)量を設け、対象事業者がそれぞれ現時点から努力を求める形となっています。ここでは詳細触れませんが、個社ごとの目標値算定プロセスは複雑極まりないのですが、こうして2020年から目標が課されることになっています。

経済産業省・第44回 制度検討作業部会:高度化法の中間評価の基準となる目標値の設定について
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/044_03_01.pdf
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非化石証書を調達するための非化石市場の設計と取引状況

非化石証書の必要性

非化石割合を上げていかないと行けないということですが、どうやって実現していくのでしょうか。

ここで考えられた方法が、電力量(kWh)と「環境価値(非化石・再エネなど)」を分離して扱うという方法です。たくさんの発電所で発電された電気を系統に流し、膨大な需要家が系統から電気を取り出して使うということを行っている以上、使った電気の発電元を特定することは極めて難しいです。加えて、蓄えるということに大きなコストがかかるのが電力であるため、需要と供給を一致させるという電力量の取引はそのままに、再エネや非化石といった電源の価値を電力量から分離して扱うということを行っています。

そして非化石電源であるという価値を取引するための市場がJEPXに創設された非化石価値取引市場であり、非化石証書を購入することでこれを証明できる仕組みになっています。

非化石証書の分類

ややこしいのが非化石証書の種類です。以下のように、「再エネ指定」かどうか「FIT」かどうかで分類されており理解を困難にしております。対象電源のところを見ていただくとそれぞれメインの電源が違うのでわかりやすいと思います。

経済産業省:非化石価値取引市場について
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/044_03_02.pdf

なぜややこしくなるのかというと、FIT制度(固定価格買取制度)に起因します。FITは再エネ電源を建設したとき、その電力を政府が決めた単価で全て買い取ります、という制度です。その負担額は電気を購入した需要家みなさんに乗っているわけですが、その時点で十分補助を受けていると考えられます。

一方FIT電源も再エネなので、非化石価値があります。十分負担額を補填されているため、その非化石価値は費用負担調整期間(GIO)が一括して市場に売りに出し、そこで得られた収益をFITの負担金の軽減に活用しようということになっているのです。これが「再エネ指定FIT非化石価値」に該当します

一方で、FITというのは期間が決まっています。10kW以下の太陽光は10年のため、FIT期間が終了した「卒FIT」電源が存在するのですが、こうした電源は非化石価値が発電事業者に戻ってきます。また、FIT指定でない再エネとしては他にも水力などが挙げられ、これらは発電事業者が自由に売れます。売り方としては、市場(JEPX)以外にも直接小売事業者に売る相対取引もあります。これが「再エネ指定非FIT非化石価値」です。

最後に残るのが、再エネではない非化石価値なのですが、これはずばり原子力が該当します。こちらも発電事業者にその価値が帰属し、市場、相対取引によって売ることができます。これが「再エネ非指定非FIT非化石価値」です。

非化石証書の取引量と価格

非化石市場は現在では毎年度4回オークション形式で取引が行われています。
以下のグラフでは、入札時期ではなく、購入した証書の適用年度を横軸に取り、約定量を縦軸としたグラフを示していますが、20年度から高度化法の目標値が課されたこともあり、取引量が大幅に増加しています。

非化石証書の価格は入札といっても最低価格と最高価格が決められており、その範囲内で約定価格が決まります。これは、非化石市場が始まって間もない間は、まだまだ売り入札に対して買い入札が十分に無く、約定価格が最低価格になることが避け難いからです。

約定量が大幅に増加した2021年でも、約定率(約定量÷売り入札量)は20%を下回っています。脱炭素化に向けた動きが加速化しているため今後はわかりませんが、現在のところは非化石証書が余っているということになります。

こうした状況でも一定の非化石価値を担保し、非化石電源の増加が進むよう最低価格を設けているのです。

非化石証書の中でも、非FIT非化石証書が取引されるようになったのは2020年からなのですが、最低価格がそれまでのFIT非化石証書よりも安く設定されたこともあり、2021年の約定量のうち多くが非FIT非化石証書になっています。

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RE100に対応、非化石価値取引市場の創設

このように高度化法の達成のために作られたのが非化石証書と非化石価値取引市場でしたが、国際的な脱炭素化の動きに対応するには不十分な部分がありました。

  • FIT非化石証書の価格が高い:海外では0.1円/kWh程度の水準で取引されており、脱炭素対応にコストがかさむ
  • 非化石証書を購入できるのが電力小売事業者に限られており、需要家が直接購入できない
  • 再エネ指定のFIT非化石証書は、電源のトラッキングができず、国際的なイニシアチブ RE100に対応することができない。

上記のような課題を乗り越えるべく、従来の非化石価値取引市場は、「再エネ価値取引市場」「高度化法義務達成市場」の2つに分離することになりました。

上図のように、FIT非化石証書が分離して再エネ価値取引市場で取引されることになり、ここでは需要家が直接購入することができ、電源も順次トラッキング対応していくことになります。
その第一回の取引が21年11月からスタートすることになります。

今後はより非化石価値の証書取引量が増加し、非化石電源のニーズも上がってくると考えられ、活性化していくことが考えられます。

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