スタートアップへ転職して4ヶ月、あっという間でした。良くも悪くも、当初描いていた役回りと変わってきているところがあるのですが、このあたりを振り返りながら、スタートアップで必要な柔軟性について書きたいと思います。
(あるある)入社してみたら、思っていたより手前のフェーズだった
事業開発は順調
私のポジションは事業開発であり、「簡単に言えばお客さんを捕まえて売る」というところなのですが、「営業」としていないのは、プロダクトの売り方から、ビジネスモデル、ターゲット顧客をどこに定めるかなど少し所掌が広いからです。
最初の3ヶ月で、実際に潜在顧客や市場をマーケティングして、どんな商品なら売れそうか、またこんなビジネスモデルでいいんじゃないかということはおおよそ見えてきました。
かなりの数の潜在顧客とコンタクトし、「製品ができたらぜひ買いたい」という声をたくさん頂いています。
これらを元に、どんな用途でどんなお客さんに売っていくかという戦略も大枠は見えてきています。
一方で、プロダクトの市場投入までは少し時間がかかることもわかってきました。事業開発にとっては売り物がない状態です。そこで求められる役回りも変わってきていて、例えば事業シナジーを見込んで出資してくれたステークホルダーと今後どういったビジネスを展開していくかを検討する、といった対応が求められてきます。
モノづくりの現場はそう簡単に進まない
事業活動は、資本があり、製品があり、顧客がいなければ成り立ちませんが、その中で律速となっている部分に全体のスピードは制約を受けます。そうなると、その律速段階へ臨機応変にリソース投入していくのが重要です。
高度なハード・テックのスタートアップであり、投入予定の製品の競争力が高いので、顧客の感触は良く、営業活動は決して難しくはありません。
一方で、新しい製品を開発し、しかも自社で製造していく、というのはやはり一筋縄ではいきません。
また、これは製品によると思いますが、量産品で既存製品を置き換えるようなものの場合、競争力のある価格設定が重要です。そしてそのためには、相当の数を一気に生産する必要があります。「数」がどれだけ出せるかはコストに激しく影響します。
設備投資の金額が仮に同じだったとすると、固定費は100個ならば1/100、1000個ならば1/1000だからです。加えて材料費は調達量が増えるほど安くなります。
従って、如何に大量に作れる環境を構築するか、が生命線です。これは作るー売るが一体で必要です。
役回りのシフト、柔軟性が大切
事業開発から製品開発・生産へ
私が営業中心の事業開発に関わるメンバーの中で少し違うのはバックグラウンドが「エンジニア」であることです。エンジニアとして一製品を突き詰めてきていない分、専門性という意味では乏しいのですが、工学の基礎と、基本的な物理の考え方を理解していることはハード系テックスタートアップではつぶしが効きます。
事業開発の行き詰まりを感じたため、プロダクト開発、生産をしている各部門の人によく話を聞くようにし始めました。そして社内の部門間でキャッチボールが上手くいっていない部分、落ちているボールを拾うということをやり始めました。
例えば最初にやったことは、プロダクトの開発をしている部門が描いているものを、実際に作れる形に図面化・仕様書に落とし込むというようなことです。ここの間では、生産側から「作るものをちゃんと指示してください(要件定義をきちんとしてください)」、開発側から「こういうもの作って欲しいです(かなりアバウト)」というようなミスマッチが起きてました。
この部分を拾いに行き、開発側が考えていることを図面や仕様書に落とし込み、生産側に渡すということをやり始めたところ、非常に感謝され、次のステップに進むことができました。
これを皮切りに開発・生産サイドからぜひ応援に来てほしいというお声をいただき、少しずつ自分の役回りをシフトさせています。
エンジニアのバックボーンはつぶしが利く
前職では技術営業という職種だったのですが、実際にはなんでも屋さんで、エンジニアとして「これが設計できます」というほどの専門性もなく、中途半端な職種だなと思っておりました。
しかし、スタートアップへ来てみて思うのは、営業としてお客に話に行くこともできれば、勉強しながら技術のこともわかるというのは、流動的でやることが次々新しく出てくるスタートアップにおいてはつぶしが利いて良いということです。
専門性を持った人ももちろん必要なのですが、落ちているボールを拾える人材も必要です。
考えてみると、大企業はもっと縦割りだったので、部門間の壁に阻まれ、拾われていない仕事が落ちていました。そういうボールを拾っていかないとプロジェクトは前に進まなかったので、構造的には似ているかと思います。
何でも屋・ジェネラリストは専門性を突かれるとつらいですが、活躍の場は結構ある、と感じました。
大企業からスタートアップへ転職した著者が見たリアルについて様々な記事を書いており、以下はそのまとめページですのでぜひ御覧ください(転職について、組織論、マーケティング、ITなど)。
コメント
大活躍、、、、すばらしい。私も転職4か月だが、まあ4か月いたな、ぐらいの感覚。やっぱり、年齢による覚えの差(プラスもともとの能力?)による立ち上がりに違いを感じる。
なんでも屋、というのは、当然ながら「なんでも屋を必要とし、活用する環境では活躍できる」ということだろう。小さい会社では当然だろうし、スタートアップもそうだろうが、大企業も同じくだろう。大企業ではやっていることも大きいので、本来なんでも屋が埋めるべく穴もたくさんあるが、そこにうまくなんでも屋をはめることが容易ではない、ということなんだと思う。
エンジニアとしてのバックボーンが貴重というのも、そのとおりで、どこにでも共通する話だろう。もちろん、エンジニアだらけのところでは文系人間も本来貴重なんだろうと思うが、文系人間が多い場所でエンジニア出身、理系出身者が何かと役に立つのは、そのとおりだと思う。
それにしても、事業開発というのは容易ではないと思うが、それを短期で切り開いていったそのスピード感は何物にも代えがたい、と思う。
ありがとうございます、もったいないお言葉です。
事業開発も僕一人でやってるわけではないのですが、本当に深いところまでやる前に、別のボトルネックが生まれてきた、という感じがあります。
スピード感はやっぱり全然違いますね、どんどん状況変わっていく感じは新鮮です。