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AIとはなにか、行きつく先は

AI(人工知能)には実は学術的な定義がありません、専門家でも定義が分かれる曖昧なバズワードです。何となく人工知能と言ったときに鉄腕アトムやアイ,ロボットの世界観のイメージをしてしまいがちですが、今注目を集めているディープラーニングはこうしたいわゆる「汎用型AI」とは程遠いのが実情です。

人工知能(AI)とは?定義や歴史、トレンドから将来性まで徹底解説
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人工知能については、日本に松尾豊先生という素晴らしい研究者がいらっしゃり、彼の言っていることがとても理解に役立ちます。かみ砕いて、現在のAIブームを牽引するディープラーニングの何がすごいか、今見えている世界でどんな未来が見えるか、自分なりの見解をまとめたいと思います。

参考:人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの

なお、このタイミングでAIの話を書いたのは、「サピエンス全史」で一世を風靡したハラリ氏の次の著書「ホモデウス」をようやく読んで改めて人工知能の向かう先について考えさせられたからです。このあたりも触れたいと思います。

参考:ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来


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AIブームを牽引するディープラーニングとは

ディープラーニングとは、機械学習の一つです。

機械学習とは、データを使って反復的に学習させ、パターンを覚えさせることを言います。学習の仕方によって機械学習は分類されており、入力に対する答えがあるかないかによって「教師あり」「教師なし」に分類され、スコアを高くすることを目的に学習するのが「強化学習」です。

AINOW:ディープラーニングとは
https://ainow.ai/2019/08/06/174245/#i

ディープラーニングは、ニューラルネットワークという脳の神経細胞(ニューロン)の構造を使った学習プロセスです。

ニューロンは下図の左のような見た目で、多入力一出力の構造をしています。これを数式で置き換えると右のようにモデル化されるのですが、これがニューラルネットワークの最小単位になります。

沢山のノードからインプットの情報が来るのですが、それに重みをかけて全部足し合わせるという計算をします。重みというのは、どのインプットを重要視するかという意味で、重みが大きい入力ほど出力への影響が大きくなります。

このとき、入力値を足し合わせた数値を最終的な出力としては0-1の間にします。これは決まった範囲の中でどこにいるか、0-1(0%-100%)の間のどこにいるかを判定させると理解するとわかりやすいかもしれません。

数式としては以下のシグモイド関数に代表されるような、インプットに対して出力が0-1になるような関数が使われます。

この最小単位のノードを下図のように沢山連結したものがニューラル・ネットワークであり、中間層を沢山設けてより深く学習できるようにしたのが「ディープラーニング」です。

学習というのが何かというと、入力に対して出てきた出力が「正しい答え」と合うように、重みの値を修正することになります。
これをいろんな入力のデータに対して行うことで新たな入力が来た場合の出力としての正答率が向上していきます。

「ディープラーニング」など先進AIの活用において、官民一体となった日本の攻勢が始まる!
https://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/5427/page/3/Default.aspx

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ディープラーニングでできること

「目」の獲得

ディープラーニングの何がすごいかというと、「特徴量を自ら取得できること」です。これまでの学習プロセスは、例えば猫について学習するとき、猫がどんなものかを、例えば「耳があって」「鼻がこんな感じで」という感じで定義してあげないといけませんでした。しかし私たちが感覚的に理解しているものを定義するのは難しく、犬と猫の違いすら表現するのが難しいです。

しかしディープラーニングを使うと、猫の写真を大量に入力して、「猫」と答えが合うように学習を沢山繰り返すことで、何が猫なのかという抽象的な「特徴力」を獲得できるのです。

ディープラーニングが効果を発揮しているのは、特に画像認識の分野です。画像は点の集まりで表現できますから、点の数だけ入力を用意し、出力層に至るまでに膨大な中間層(100とか)を経て、一つの出力になるようなニューラルネットワークを構築します。これは膨大な情報量を圧縮し、抽象概念を形成しているとも言えます。

当然ながら膨大な計算量になるため、コンピューターの計算能力の発達が大きく寄与しています。またこれだけのノードがあると、どこをどう学習させてるか(どこの重みをどう変えていくか)の部分や、少ないインプットデータでどう効率的に学習するかという部分でノウハウがあり、そのあたりが機械学習の技術になります。

画像認識ができるということは、言い方を換えると、ディープラーニングによって、機械が「目」を持てるようになったということかもしれません。

意味は理解していない

ディープラーニングによって機械が認識力を持ち、知能を獲得していく術を持ったわけですが、人間のように意味を理解しているわけではありません。

例えばGoogle翻訳ですが、昔は英語を翻訳するとおかしな日本語になっていましたが、最近は実用に耐えうるレベルに進化していますよね。ここにも機械学習が生きていると言われています。しかしそれでも、Google先生が英語の意味を理解して、日本語に変換しているわけではありません。あくまで膨大なデータ量からパターンを認識し、こういう翻訳が多かったというものを当てはめているにすぎません。

僕が理解している限りでは、まだ意味の理解までは遠いように見えます。ニューロンの働きの部分と違い、人間の脳がどうやって意味を理解しているのかもまだわかっておらず機械でどう表現するのか見えていないからです。10年後ではないかもしれませんが、20年後なのか、50年後なのかわかりません。

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人間の欲望のメカニズムがわかれば自由意志はなくなる

ディープラーニングが何かを理解していくと、人間の代替になるわけではなく、自動化により機械化される部分は沢山あり、たくさんの職が失われる可能性は高いものの、人間にしかできないことはあるよね、という実感に繋がります。

病気の診断や、自動運転といった部分は機械が人間を上回ることになるでしょうが、娯楽や芸術といった創造的、人の心と向き合う部分は人にしかできないと思うからです。馬車が車に置き換わっても、人は車を作ったり運転する仕事を見つけてきました。歴史を振り返ると、仕事の喪失は新たな仕事を生んできました。

このようにこれまで楽観的に考えていたのですが、ホモデウスを読んでいて、そうではないのかもしれないと思い始めました。

自由意志は存在しない

私たちが信じている「自分の意志」というものは、脳内の生化学反応に過ぎず、何にどう反応しているのかというものをある程度の量データ(例えばSNS)があれば、何を出せばどう反応するかをコントロールすることができる、ということが書かれています。

Netflixのリコメンド機能がわかりやすいと思うのですが、次に何を見るかということをオススメを元に判断していると、これはもはや自分で選んでいると言えないのではないか、こうしてリコメンド機能が発達していくと、結婚相手や職業選択といった重要な意思決定までもが、データに基づく機械のオススメの方が自分自身の決定よりも優れていき、データに基づく機械に頼っていく世界になるというのです。

これは、人間の認識や意思決定のメカニズムがわかってしまえば、機械が意味や意識を獲得していなくても、データからのパターン認識の世界で(ディープラーニングの延長線上の世界で)人間をコントロールができることを意味しています。人間は機械アルゴリズムの奴隷になるわけです。


直接コミュニケーションできる人数を超える個体数で集団を維持できる動物は人間以外にはいません。それが実現できるのは、人間が”虚構”を作りだし物語によって秩序を生み出せたからだとハラリ氏は言います。

その信ずる虚構が神から、科学技術の発展に伴い人間自身に変わったのが今現在、そしてこれから更なる科学技術によって、次は人間から信じる対象がアルゴリズムに変化していくと続けています。

数年後という時間軸の話ではありませんが、現在の科学技術の延長線上に描ける現実的な未来なのではないか、僕はそう感じました。感情的には、機械の奴隷になる世界はあんまり面白くなくて、抗いたくなる気持ちがあります。

一方で映画「マトリックス」で描かれるような人間はエネルギーを生むだけの存在、というわけでもなく、あくまで人間は気持ちよく生活させられているわけで、人間という種が存続する限りは生物として果たすべき種の存続はできていると言えるのか、とも思ってしまいます。このあたりは本を読んでいて非常にもやもやしました・・・

食べるために働かない世界

AIによる大量失業と相性の良い考え方として、ベーシックインカムを効果的に導入した世界が提唱されています。

高度な専門職を除き仕事がなくなる未来に対して、個人的には暗い予感をさせられるホモデウスですが、少し別の見方も予感をさせられます。

参考:AIとBIはいかに人間を変えるのか

食べ物やインフラといった必要な生活なものを生産するのが機械になると我々の仕事は激減することになるのですが、「働かざる者食うべからず」の世界では生きていくことができません。そこで、「ベーシックインカム(BI)」導入するという手があります。

BIは全ての人に生活に必要な最低額無条件で付与するという制度です。BIがあると「働かざる者食って良し」の世界に変わります。BIはAIと非常に相性が良いです。インカムではなく、ベーシックサービスという考え方もあり、これはお金ではなく生きるために必要な生活財は無料にするというものです。

この世界では働くことの意味が大きく変わります。生きるためにやりたくないことをする必要はなく、人は自尊の念を得るために人は働くようになります。
例えば今までは稼げないから無理だと思われていた一部の人にしか付けなかった職業、音楽や芸術、スポーツの世界といったものにお金を気にせず取り組むことができます。

BIは極めて単純な政策なため、複雑ゆえに仕事があった方々の既得権益を大きく侵害しますし、必要な財源を確保するまでには機械が相当発達する必要がありますが、AIが発達した未来の社会として「みんなが好きなことをして生きていく世界」というのは魅力的な気がします。

こうして考えていくと、種の存続が目的は前提にあるとしても、人類は何を求めていくのか、人類のビジョン、人とは何かということに繋がっていく気がします。AIは哲学に向かいます。

 

 

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コメント

  1. これまたしっかりまとまっていて勉強になりました~

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