タイトル

危機を突破する最強の「経営チーム」を掘り下げる

大企業を中心とした「風土改革」にハンズオンで現場に何十年と携わり続けていらっしゃっているスコラコンサルト代表の柴田さんが新刊を出され、早速拝読しました。

僕自身以前危機に陥った自社を変革すべく立ち上がった「風土改革」に関わった経験があります。途中で抜けてしまったのですが、始まりから1年半ほど関わる中で会社が変化していく様相を内部で感じ、いろんな断面で企業変革とは、組織はどうあるべきか、今どうするべきか、など考えていました。

改めて当時できたことできなかったことを振り返りながら今一度この命題について考えてみたいと思います。ネタバレします。

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本の紹介

なぜ、それでも会社は変われないのか 危機を突破する最強の「経営チーム」
boompanchさんのレビュー
boompanchさんの柴田昌治『なぜ、それでも会社は変われないのか 危機を突破する最強の「経営チーム」 (日本経済新...

要約

日本的組織の特徴は「予定調和」、結論ありきの組織運営であり、その問題は前例踏襲で深く掘り下げる思考をしなくなることである。

これが組織の安定を重視する大企業を根本から支える文化だが、低成長を抜け出し非連続な価値創造を生み出すには「挑戦文化」に変える必要がある。

その要として経営陣(役員チーム)に注目し、共感力をベースとして当事者意識を持ったチームに変えることで変革を推進していくことを提唱している。
風土改革とは、調整文化から挑戦文化への変革だ。

内容のメモは上記リンク先にあります。

これまで何十年も風土改革に携わってこられた著者柴田さんの本の中で本書は、役員チームというレイヤーに焦点を当てた点が新しいと思います。個と個の信頼関係を築き、本質的な改革をする、その一番泥臭いところをハンズオンで支援されてきたからこそ見える泥臭い知見に大きな価値を感じます(頭出しと3章)。

余談ですが、個人的には柴田さんの本の中ではいすゞ自動車の改革について書かれた
「どうやって社員が会社を変えたのか 企業変革ドキュメンタリー 」
という本が好きです。90年代と今から20年以上も前の改革の話なのですが、時代を超えて通ずるものがあり、生々しく泥臭い本気の戦いをしている人の姿には心を打たれるものがあります。特に登場人物の中で変革の推進者が以下の一言を言われるシーンがあり、自分が言われているような気がして印象に残っています。

「人間性が今ひとつだから、人から色々言われるんだ。敵を受け入れるくらいの幅でやらんとだめだ」

boompanchさんのレビュー
boompanchさんの柴田昌治『どうやって社員が会社を変えたのか 企業変革ドキュメンタリー (日経ビジネス人文庫)』に...
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役員のチーム化が有効な前提条件とは

この本を読んだ感想としては、「役員をチームとして機能させる」ことで変革がドライブされるのは企業がどんな状態のときなのか、掘り下げが必要があると思いました。

本書の中では架空の企業「東洋精電」が事例として取り上げられています。ここでは、社長スポンサーのもと、コンサルタントのサポートもあり役員がチーム化、そして「社長の出身事業のクロージングというタブーへの切込み」をチーム一丸となって社長に上申します。

これが役員チーム化によるアウトプット事例として描かれていて、役員チーム化による大きな変化だと実感できるのですが、この事例はある意味忖度の世界の問題だと思います。

薄々気づいていたけど言えなかったこと、10年間変わらず存在し続ける課題、といった「既存事業の延長線上に見える課題」に関しては役員のチーム化がワークしそうだと言うイメージが湧きます。

一方で、本質的な事業変換、特に既存事業を否定するような変革が本当に役員をチーム化することで可能なのかという疑問が生まれました。このレベルになると経営者の強烈なトップダウンがより重要ではないかと思うからです。

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その1:独善的だが情熱ある強烈なトップダウン

過去大きな環境変化の中で、既存事業の延長線上に未来を描けないという危機感があり、新しい方向性を模索したのですが、若手選抜チームと役員チームを混在させた2チームでビジョンを考え、2チームのアウトプットを元に社長の判断でビジョンを出すことで新たな方向性を打ち出すということをしました(自分は中では関わってませんが)。

集められた若手メンバーは優秀なエースで、かつ既存事業の枠から超えた発想も持てる方々でしたが、誤解を恐れず言えば、ここで最終的に打ち出されたビジョンはありきたりで「当たり前」なものだと僕は感じました。

ビジョンは、ありたい姿、目指す姿を羅針盤のように示し、意思決定する際に「そこに向かっているか」という判断軸となる意味で重要だと思います。

しかし役員チームとはいえ、様々な事業の統括責任者という利害関係者のメンバーが合議の中で見出すビジョンは、エッジが取れたバランスの良い、ありきたりなものに落ち着いてしまいます。これは優秀かどうかという問題ではないと思っています。

みんなが納得するようなものは、誤解を恐れず言えば何の面白みもワクワク感もなく、むしろ皆が反対するような方向転換を如何に振り切ってできるかが勝負なのだと思います。となると、それはトップダウンでしかなしえないのではないかと思います。

これは強烈なトップダウンのもと、富士フィルムが銀塩フィルム全盛期に社内の強みを洗い出し、色んな可能性を模索する中で医療分野への転身を果たした事例からも学べるのではないかと思います。

その2:不連続な事業転換を役員チームがサポート

上記のようなトップダウンな方法ではなく、もう少し日本的なやり方で、かつ役員チーム主導で緩やかに事業変革ができないか、ということを考えてみたいと思います。

今までやったことないことを、今までやってきたことで評価されてきた役員のチームで行っていくというのは経験を活かせず構造的に難しいと思われます。特に同質化し、一部門での実績が評価されて出世してきた場合はなおさらです。

しかし、社内から上がってくるアイデアに対してリソースを投入し、新しい事業の柱の目を育てていく環境を作るということは、役員がチームになれれば合意できるのではないかと思いました。

この時、方向性としては、これまで培ってきた技術基盤を活かしていく、ということになると思いますが、次のようなポイントがあると思います。

  • 自社の強みを洗い出し、掛け合わせで事業アイデアを創出し、小さくトライ&エアーを試行する機会を作る
  • 自らの経験の範囲外の事業の筋の良さを判断することはできない(市場に問うしかない)と自覚し、良しあしの判断を自分で行わない
  • 技術のベースがあるといえ、事業が立ち上がるかは確率論の世界のためポートフォリオで管理し、段階を踏んでリソース投入を増やしていく

ただ、こういったプロセスで変革ができるのは、まだ体力に余裕がある段階だと思います。経営がだいぶ傾いてからだと、やはりトップダウンでないと難しいのではと思います。

挑戦文化を阻むイエスマンの扱い

調整文化は日本の大企業の特徴として描写されていますが、新しい企業それこそスタートアップでも、起こりうると思っています。それは、イエスマンの扱いがポイントだと思うからです。

ボス(社長、役員などの組織長)を忖度し、その意向に沿う結論に持っていく「調整」が上手な人(=イエスマン)が評価されていく場合、組織の人間は考える力を失っていきます。当然挑戦しようと思う人もいなくなっていきます。

このイエスマンの存在を上がどう扱っていくかが、文化形成においては非常に重要だと思います。しかしこれはかなり根深い問題で、人はNOと言わない人間が可愛く見えますし、引き立てたくなるものです。良かれと思っても意に反することを言ってくる人間は遠ざけたくなる、これは心理だと思います。


大河ドラマ「麒麟が来る」では、主人公の明智十兵衛(光秀)が仕える斎藤道山が治める美濃の国における、勢力争いの様子が描かれています。成り上がりの斎藤道三に対し、嫡男の高政をはじめ快く思っていない家臣が数多くいる中で、明智十兵衛の叔父である明智光安は見事なイエスマンです。

恐らく道三も光安が決して優秀ではないことはわかっているのですが、それでも自分に決してNOと言わない家臣を重用していきます。強烈なトップダウン型の道三のようなトップは大きな方向転換には効果的なのですが、反発も多いだけに周りはイエスマンで固まりやすいという構造的な問題があると思います。

NHK 大河ドラマ『麒麟がくる』
2020年1月19日(日)放送スタート! 本能寺の変を起こした明智光秀を通して描かれる戦国絵巻。仁のある政治をする為政者が現れると降り立つ聖なる獣・麒麟を呼ぶのは、一体どの戦国武将なのか…新たな時代の大河ドラマが今始まる!

まとめ

<なぜ、それでも会社は変われないのか 危機を突破する最強の「経営チーム」>
を起点に特に大きな事業変換が伴う場合の「経営チーム」について考えてきました。

既存事業の延長線上に未来を描けないような変革を行うには、以下の二つのような動き方があるのではないかと思います。

  • トップの強力なトップダウンで反対者を抑えて進める。ただしこの場合は変革後に周りにイエスマンしか残っていない可能性がある。変革後には役員をチーム化して新たに挑戦文化を醸成する必要がある。
  • 役員をチーム化して、次なる事業の目利きが難しいと自覚した上で、自社の強みの棚卸、事業創出の動きを作り、リソースを十分に投入してポートフォリオ管理していく。ただし、企業に体力があるときでないと難しい。

どうしても自分の会社での経験からしか考察することはできませんが、風土改革すなわち調整文化から挑戦文化に変革することを考えるための議論の題材として面白いと思いました。

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コメント

  1. えーと、まだこの本を読んでませんので、先にこちらを読むのはやめときます。、、、著書を読んだらこちらもじっくり読ませていただきますね。

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