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大企業での組織改革を総括、有志の力で会社は変えられるのか?

スタートアップへ来る前、大企業で奮闘していた時期に行っていた有志活動の総括をしたいと思います。性質としては一つの「組織改革」を行っていたと考えています。退職してから、色んな人と話している中で、ふと見えてくることがあり、そんな断片を整理してまとめます。

どんなことをやっていたか「有志活動の意義」「オンラインサロンとの比較」「できなかったことと課題」という4本立てでいきたいと思います。

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有志活動、組織改革、どんなことをやっていたか

有志活動と言うくらいなので、自主的に行っている活動全てが包含され、決まった形もないかと思います。いろんな会社でいろんな人がいろんなやり方で活動してます。自信も企画側として携わった企画をご紹介します。

  • 社長との対話会
    色んな事業所に社長を呼んで、アフター5の時間に公開討論のような形で対話会を実施しました。会の後には懇親会も実施し、社長と盃を交わし、ちょっと話しにくい話、現場の生の声を届けたりしました。普段は触れることのないトップの存在の民主化です。
  • 外部講演
    面白そうな人に来て頂き、講演して頂きました。普段仕事中は見たことが無いような、輝いた目で講演者に質問している様子がとても印象に残っています。
  • 家族訪問会
    社員の家族を会社に呼びし、お子さん向けのワークショップを行ったり、名刺交換の真似っこをしてもらったり、パパママの仕事場のデスクに行ってみたり、ということを実施しました。
    子供が来ると、会社はすごく和みます。とても評判が良く、2回目開催したときはすぐに満員になりました。
    翌日にお礼メールで「昨日はとても誇らしい気持ちになりました」という内容を参加された社員の方から頂き、朝から泣きそうになりました。
  • あれってどうなってるの?勉強会
    新聞などで自社のニュースが出ても、「初めて知った」ということは大企業では日常茶飯事です。そこでニュースの当事者の方に来ていただき、解説して頂く、ということを行いました。二次情報の新聞やニュース番組は誤解を生む表現になっていることも多々あり、「本当の姿」を伝えられて当事者も喜んでいらっしゃいました。
  • 他社との交流会
    事業環境が大きく変わっていく中で、例えばデジタル、IoTみたいなキーワードについて各社の取組みを紹介したり、お互いの会社の歴史を紐解いてみたりということをして他社を鏡に自社についてより理解を深めることができました。
  • 社内仮想通貨の立ち上げ
    何か行動を起こすきっかけ(インセンティブ)にしたい&ニーズの確認をしたい(マーケティングになる)という部分を狙ったサービスを社内で立ち上げました。
    自分ができることややりたいことを投稿し、自分が持っている仮想通貨で買ったり、投げ銭をして他の人の活動に「いいね!」を送ったりということを実験的に実施してみました。

他にもいろいろありましたが、わかりやすいところをピックアップしました。
最初は総務部門から強く反対され、実施すること自体が大変でしたが、良い影響があることも理解して頂くことができ、次第に市民権を得ていくことができたと実感しています。

私たちは、大前提として「業務外」の活動としていました。会社公認という組織にしてもらい、業務時間中に活動する、という方法もありますし、実際にそういった形を取っている会社や他の活動もありました。しかし私達がそうしなかったのは、活動の幅を狭めないためでした。

もう少し詳しく言うと、

  • 人により上司が違う中で上司の理解を得る、というプロセスを挟むのを避けたかった
  • それは仕事なのか?どう会社に貢献できるのか?という問いをそもそも無くしたかった、事業に貢献しなくてもやりたいことをできる場にしたかった

2年ほど活動して、全従業員の10%ほどが何らかの形で関わってくれて、一人平均すると3回くらい何かの場に足を運んで頂けました。


※様々な大企業での、いろいろなバリエーションの有志活動が以下の書籍で紹介されております。

仕事はもっと楽しくできる 大企業若手 50社1200人 会社変革ドキュメンタリー
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有志活動の意義

社内外のネットワークの広がり

普通に仕事を仕事していると、当たり前ですが、自分の部門と仕事で関わる他部門の人くらいしか知り合うことは無いだろうと思います。
上述のような有志活動を行うと、仕事の壁を越えて人間関係が広がります。これは多くの人が実感していたメリットだと思います。

私にとっては大変有難いことに、転職した後も仲良くさせて頂いている方々がいらっしゃり本当に財産だなと思います。有志活動のようなものに首を突っ込んでくるような方々は、失礼承知で申し上げるといい意味で変わった人が多いので、気が合う方々が多くいました。
自分の半径5m以内では難しくても、会社規模まで拡大していくと、1%でもそれなりの人数がいるので、ニッチなことでも共感者がいます。

これは会社の中で居心地がよくなるという意味だけでなく、仕事上でのメリットもあります。私のように新規事業・事業開発系の仕事をしていた人間にとっては、「どこの部門」が「どんなことをしていて」「キーパーソンはだれで」「どんな課題があるか」というようなことがわかっていると自社がどんなポテンシャルがあるのか、また外部からの情報を誰に投げたらいいのか、どことどこをつなぐと面白いことができそうか、などなど色んな発想が生まれます。

その中でも、特に「社内のキーパーソンと繋がれる」というのは大きいです。どこの部署にも「この人」という方はいらっしゃって、そういう人と繋がっておけると、彼らの領域のことは相談したらすぐにアクションしてくれます。大企業の動きが遅いかというと、必ずしもそうではなくて、適切な人を動かせれば、案外右に習えで早く動くこともあります。

ある事業部の方が、この活動を通して工場の人と繋がっていたお陰で、新しい仕事の時に、通常だったら大変な交渉を「◯◯さんが言う事なら」とすぐに動いてもらえた、という話もありました。

問いを立て、仮説検証、失敗ができる

サラリーマンである以上、給料を頂くために与えられた仕事をこなさなくてはなりません。そして、自ら課題設定をする機会は得にくい方が多いのではないでしょうか。課題を解決する断面ではもちろん創造性を発揮する余地は大いにあると思いますが、そもそも何が問題なのか、こうしたらいいんじゃないか、その問を立てる部分を担えるのは、幹部クラスの一部に限られてしまいますし、本業から外れた問の設定という観点では、ひょっとしたら一生できないかもしれません。

事の大小、事業への貢献度は置いておいて、自ら問を立て、仮設を立てて検証・実践していく、そのプロセスを経験できるのは大きな価値だと思います。

例えば「社長対話会」をするとします。「社長と話してみたい!」という人がいるのではないか、という仮説からスタートしているのですが、こうしたイベント設計一つとっても膨大な変数があります。目的をどうするか、トップの考えてることを知る、議論の場にする、参加者同士のネットワークを広げる、などなど設定も多様にできますし、場所を会社にするのか、外部にするのか、告知はどうしたらいいか、何を得て帰ってもらうか、などなど。上に挙げたことはすべて事前準備できる範囲ですが、当日やってみたら人が思ったより多い少ない、盛り上がらない、思ってた方向じゃない、などなど臨機応変な対応も必要です。

イベント一つとっても、開催するのは「問」や「課題意識」があるからなのですが、考えて仮説立てて取り組んで、実際にどうなるかはやってみないとわからないです。最初はそもそも参加者が誰も来なかったらどうしよう、というような不安もありました。

「ぶっちゃけ トーク」と第して本音で語ってもらおう!と思って企画したら、全くぶっちゃけてもらえず、爆弾投下係を買って出た自分が炎上して後で怒られる、ということもありました。こうした失敗経験は、貴重ではないでしょうか。

仕事の中では如何に失敗しないかが問われ、減点法で評価されていきます。もちろん、胃がキリキリするような大きな事業判断で鍛えられるものと、有志活動の失敗で得られるものでは次元が違うだろ、という声もよくわかります。しかし、事の大小とは別で、意思決定の回数を稼げたのは、仕事においての意思決定力へもかなりのフィードバックがあったと感じています。特に若手は意思決定の経験が多くないため、良い経験になると思います。

組織論を学ぶ

仕事と異なり、有志活動では「やらなくてもいいこと」をやっています。その問題意識が正論であっても、仕事でもない話に聞き手が付き合ってくれるかどうかは聞き手の気持ち次第なところがあります。

最初はそういうこと考えずに、「人事制度がおかしい、こうすべきだ」とか、「社員にアンケートとってみんなの問題点を聞きたい」とか言っていたので、「要注意人物」という扱いになっていたと思います。
そのためよく壁にぶつかりまくりました。「なぜダメと言われるのかさっぱりわからない」「この人は会社を良くしようという気がない」などと憤ってました。

幸いにも自分一人で動いているわけではないので、色んな人が間に入ってくれたりする中で、物事前に進むこともあり、まったく首を縦に振ってくれなかった人が、何を考えていたのかわかり、和解して一緒に進めるようになったことがありました。

この時に、「相手の方も全然悪い人ではない、こういう考えでこういう発言をしていたのだ」とわかり、人それぞれ言い分や事情があり、正論押し通そうとしても前に進まない、ということを心底理解しました。

客観的な正論が通らないことには理由があり、その背景を理解して共感し、相手の立場からどう変えるかという視点で話すと、まったく違う結果になっていきます。一緒に「正論で判断できない環境を変えるにはどうしたらいいか」という話ができるようになります。そうすると、徐々に前に進めます。

「やらなくてもいいことをやろうとする」ことで、視座が上がり、視野が広がり、実際に動き出すと、人に対する想像力が高まると思います。

会社にとっての価値

「自分がどんな恩恵を受けたか」=「有志活動によりどんな恩恵が受けられるか」
ということはある程度言語化できるのですが、会社にとってはどうなのでしょうか。

部門の壁を越えて社内にネットワークが生まれたことで、自発的に取り組む新しい動きが生まれたのは既に述べた通りです。お堅い大企業の中で、自由に物事を考え行っても良いのだ、という空気が少しずつ醸成されたとも思います。

業績が良くなるといったわかりやすい効果を生めたわけではありませんが、組織改革の糸口にはなったのではないかと考えています。。

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オンラインサロンとの比較

唐突に持ってきたオンラインサロンですが、この前以下の動画を見ていて、有志活動との類似性を感じたので、引用したいと思います。

オンラインサロンとは何か

オンラインサロンとは何かという定義は固まったものはなく、サロンによって全然違うようです。共通するのは、「クローズなコミュニティ」であり、「理念(物語)に共感」した人たちが集まる場であることです。

理念のすり合わせには大きなコストが伴うため、理念に共感した人の集まりでは何かしようと思ったときのコミュニケーションコストが低くて済むこと、適度にクローズなので余計な炎上がなく物事がスムーズに進むというのがポイントのようでした。

3つのサロンの違い
  • 箕輪さん:自分は関係ない、自分で動きたい人が集まっている、集まるための言い訳としてのサロンオーナーの自分がいる
  • 中田さん:Just Do It、元気があれば何でもできる。先に何があるかわからないけど、目の前でやりたいことやろうという理念
  • 西野さん:目指すところを共有、そこへみんなで一緒に走っていく

この動画でポイントだと思ったことは以下です。

  • 会社は理念に共感した人が集まっているが、仕事がない時にも雇っている人に給料を払わないといけないのが難点。サロンでは、必要なときに必要な人に仕事を発注するスタイルが取れる。
  • 受信よりも発信の満足度が上がっている。自分たちにいいパフォーマンスをさせてくれる人がスター。サグラダファミリアを見るより作りたい。コンテンツのクオリティに対する考え方が変わってきていて、コンテンツを作っていく過程のコミュニケーション自体がコンテンツに溶けている。
  • 正解は誰でも言えるので、間違いにしか価値がない間違うには一種の鎖国性が必要。治安としてのオンラインサロンの価値、透明すぎると炎上して無駄な労力がかかる。議論は鎖国内で議論して成果物を外に出したほうがいい。
  • コミュニティを作りたいというやつには作れない圧倒的なソフトがあって、そこにハードがついてくる。マリオをプレイしたくて、ファミコンができた。

オンラインサロンと有志活動との類似性

有志活動の団体は、一種のサロンだと思います。

  • 理念や何かしらの意思を持って集まった人たちの「たまりば」であり、
  • そのあり方は多様でなんでもよくて、
  • 一種の鎖国性(会社組織からは離れた空間)を持った心理的安全なコミュニティで
  • 好きという気持ちや、やりたいとう想いをきっかけに生まれるものはクオリティが高いし、その過程自体が面白い
  • 時間を共有していくことで、信頼関係が育まれていく。

鎖国性を出すために、月額というお金を発生させている面では違うものの、多くの類似点があるように思いました。家族訪問のイベントを企画したとき、運営に携わったメンバーが非常に楽しそうに行っており、高校の文化祭ではないですが、受信より発信することの満足が高まっている、という部分にも実感があります。

会社の中に作るオンラインサロンがすなわち有志活動であり、閉鎖的で心理的安全性が担保された環境で自由に新しいことにチャレンジできる、そういう場なのだと思います。

できなかったことと課題

物語があったか

僕たちの有志活動は「やりたいことを実践できる場」と定義していました。そういう意味では、参加する人が主人公として主体的に動けるような狙いは良かったと思います。


一方で、そこに「物語」が足りなかったと思っています。「楽しいと思うことをしよう」、と言っていたのですが、なぜ敢えて大企業という場でやる必要があるのか、この活動を通してどこに活きたいのか、その物語が描けていなかったと思います。

VUCAの時代、変化が激しい中で既存の事業の延長線上に未来が描けなくなってきていて、現状に対する危機感が強い方々が、何かしなければと思って集まってくれていたように感じます。だとしたら、その物語は「楽しいことをしよう」ではなかったかもしれません。
堂々と言うと反発も招きそうですが、「大企業を変えよう」とか、「新しい事業の種を生もう」といった内容の方が合っていたかもしれません。

また受信側を増やしていくことはできたのですが、発信者を増やしていくがことは思うようにできませんでした。何が足りなかったのか考えてみますと、

  • ニーズはあったが、心理的安全性が確保されていなかった
    活動自体が広く社内で認知されるようになっていっても、個人レベルではその賛否は分かれる、多くの人がどう考えているのかわからないという状況でした。周りの目が気になり動けなかった人も少なくなかったと思います。
  • 発信する側のニーズ、というのは強くない
    例えばすごい盛り上がったイベントがあり、やってよかったと主催者メンバーが感じたことは何度もありましたが、じゃあまたやろうというモチベーションが高まっていたかというと疑問を感じます。
    ここには何か別のモチベーションが必要なのかもしれません。

有志活動の運営

有志活動の継続も簡単ではありません。事務局として、最初4人で運営を始めたことは良かったと思います。誰かが忙しくても、誰かがフォローする形で運営を回すことができますし、正解がない運営なので、考え方、強みも性格が違うメンバーが議論することでバランスが取れていたと思うからです。

誤算だったことは、1人目は早々に仕事が忙しくなり、かつ事業所が離れていたため関与が少なくなってしまったこと、2人目は自分の同期であり、仲のいい友達であったのですが、留学の準備のため途中で離脱してしまったこと、そして3人目は途中から業務が忙しくなり、結果として運営が1人になってしまったことです。
適切なタイミングで、運営メンバーを増やすこともできていなかったため、引き継いで入ってもらう人を見つけることもできませんでした。

そして今思えば拡大、ペースを急ぎすぎたと思います。他の会社の有志活動と比べても、人数の広がり方、イベントの回数共に突出して多かったです。会社と同じで、ゆっくり地盤を固めながら大きくしていなかったが故のもろさがあったと思います。

焦らず、周りの人を少しずつ巻き込みながら、みんなで少しずつ動いていく、というのが大事だったのではないかと思います。自分勝手に動きすぎた、一過性な盛り上がりに満足していたが、より地に足のついた活動にするには違うアプローチが必要だったように思います。

そうした課題もありましたが、有志活動を通して、会社の空気が変わっていく実感があり、何か新しいことが起こっているという肌感覚がありました。会社という仕事で繋がるドライな場に、暖かさと思いやりを持ち込めたとも思います。


大企業からスタートアップへ転職した著者が見たリアルについて様々な記事を書いており、以下はそのまとめページですのでぜひ御覧ください(転職について、組織論、マーケティング、ITなど)。


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