地球温暖化は事実として存在し、その対策に世界中が取り組んでいくというのが現在の既定路線です。「地球温暖化のメカニズムを二酸化炭素の増加で説明する」ということは自明になっていますが、ホントにそうなのでしょうか?今ではその声は小さくなっていますが、「地球温暖化ウソ」という説も存在しており、科学的な見地からどうなのかきちんと見ておく必要があります。
ここでは二項対立の構図が見えるので、便宜的に以下のように呼称していきたいと思います。
- 賛成派:地球温暖化の原因を二酸化炭素の増加をメインとするIPCC中心の現代の主流の考え方
- 反対派:地球温暖化の原因は二酸化炭素ではないとする考え方
主流である賛成派についてはすでに以下の記事の中でもまとめてきているので、ここでは反対派の主張を見ていきたいと思います。まずは2007年にイギリスで放送された番組を起点にします。
地球温暖化詐欺:全編・CO2犯人説のウソ
2007年放送のイギリスのドキュメンタリー番組です。タイトルが中々インパクトありますね。内容が内容なだけに、番組放送後に相当クレームが来たそうで、Wikipediaでたくさん出ていました。その真偽も定かではありませんが。
この番組は登場人物が全員研究者であるところが説得力を感じます。
登場人物一覧
- Professor Tim Ball, Dept of Climatology, University of Winnipeg
「温暖化は信じているがCO2起因だとは思っていない」 - Professor Nir Shaviv, Institute of Physics, University of Jerusalem
「CO2は今よりも何倍も多かった時期がある、気温復元でその真偽はわかる」 - Lord Lawson of Blady
- Professor Ian Clark, Dept of Earth Sciences, University of Ottawa
北極の古気象学の第一人者
「地質学的な時間概念で考えれば主原因はCO2ではない」 - Dr. Piers Corbyn, Climate Forecaster, Weather Action
太陽物理学者、太陽による長期予報、元々太陽黒点の研究と黒点の予測のためにやっていた。
「ここ数千年の気候変動でCO2で説明できるものはない。」 - Professor John Christy
地球の大気測定の技術を発展させた人(1991NASA表彰、1996アメリカ気象学会特別賞)
「地球温暖化CO2犯人説を支持しない学者はたくさんいる、私もその一人。」 - Professor Philip Stott, Dept of Biogeography, University of London
「IPCCでは、最終結論は政治的に導かれる」 - Professor Paul Reiter, IPCC & Pasteur Institute, Paris
「IPCCは2500人の科学者がいると言われているが、科学者以外もたくさんいる。議論に参加せずに辞めた人も含まれている」 - Professor Richard Lindzen, IPCC & MIT
「反対している科学者がいないのだから反対すべきでないと言う人もいるが、プロパガンダだ。言ってはならないのは、「これは問題ないかもしれない」」 - Patrick Moore, Co-founder, Greenpeace
「環境保護運動は単なる政治活動、途上国の発展を妨害する最強の勢力と化している。」 - Dr. Roy Spencer, Weather Satellite Team Leader, NASA
NASAのマーシャル宇宙飛行センターの気候研究の上級科学者、NASAとアメリカ気象学会に表彰 - Professor Patrick Michaels, University of Virginia
ヴァージニア大学環境科学教授、アメリカ気象学会応用気候学委員会議長、気象学著者、IPCC執筆者兼査読者
「現在温暖化頼みの仕事が何万とある、ビックビジネス」 - Nigel Calder, Former Editor, New Scientist
「賛同しない人に対して激高する人を見てきた、これは科学的ではない」 - 赤祖父俊一, International Arctic Research Center, アラスカ大学フェアバンクス校名誉教授、アラスカ国際北極研究所(IARC)所長
- Professor Frederick Singer, Former Director, US National Weather Service
- Professor, Carl Wunch, Dept of Oceanography, MIT
ハーバード、ロンドン大学University Collageの海洋学の客員教授、ケンブリッジ大学の数学と物理学の上級客員研究員、海洋学の有名な教科書の著者
温暖化?寒冷化?、過去の気温の変動について
そもそも地球は温暖期と寒冷期を繰り返しながら脈々と存在し続けています。過去1000年の気温の変動を見ると、中世の温暖期は今よりも温暖であり、確かにここ数百年で見ると今は温暖化が進んでいるものの、その循環のトレンドにあるだけという見方。
また過去1万年まで見ると、8千万年前には(石器時代)今より温暖な数千年におよぶ温暖期があったようです。
この二つの温度のデータは賛成派であるIPCCがソースです。そのため、反対派が使うデータソースとしては同じものをみて議論していると言える点で説得力があります。
以前取り上げたアルゴアの「不都合な真実」の中でデータソースについては触れています。
温暖化を議論する上での、気温のデータの正しさ
気温・温度と一口に言っても、どう測っているかでその値が変わってくるようです。以下の記事を見ていると、衛星観測による測定と、地上での観測でも差があるようです。そもそも、温暖化で議論しているのは、0.5℃いった大きさの温度差なので、計測精度の影響が大きいです。どのような計測方法で計測すると精度が良いのか、等々温度計測の部分でまず深堀が必要そうです。
この記事は「Evidence-Based Climate Science, Data Opposing CO2 Emissions as the Primary Source of Global Warming」という論文を参考にしているようです。
https://thsresearch.files.wordpress.com/2017/05/chap3-published-in-elsevier.pdfただこちら書籍のようで査読論文とは位置づけが違うと理解してます。かつ、本書の位置づけから「反対派」であることがわかり、素直に信じてよいかはわかりません。ただ、「気温の測定方法には、衛星観測と地上観測があり、データに食い違いがある」という点は検証に値すると思いました。
そもそも温暖化しているのか、ということを判断する気温のデータすら、何をもって正とするかに議論が必要ということになります。せっかくなのでこの論文で気温の衛星観測データとして紹介されているUAHとRSSの生データを見てみたいと思います。
UAH: University of Alabama in Huntsville
UAHのHP「https://www.nsstc.uah.edu/nsstc/」から辿っていくとこちらのHPにたどり着きます。DATA➡Monthly Average Dataから生データが拾えるのですが、このデータの月平均気温を平均して年平均気温とし「Globe」のデータを時系列でみると以下のようになります。
こう見ると、ところどころ特異点がありますが、これは太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなるエルニーニョ現象と低くなるラニーニャ現象が関係していそうです。
RSS: Remote Sensing Systems
RSSは社名で、北カリフォルニアの研究会社のようです。HPを見ると会社についてもデータの計測方法についても情報があるのでこちらの方がデータとして信頼がおける印象です。
マイクロ波を用いて計測したデータを処理して気温に変換しているようなのですが、どの高度のデータを持ってくるかで気温が変わっていきます。この中で地表に近い3つのデータの年平均気温の推移を見てみます。
http://www.remss.com/measurements/upper-air-temperature/
3つの高度のデータを見てみると、近年になるほど差が広がっているものの、その差は0.1℃程度で、全て共通して温暖化の傾向が見られます。
データがみれるページはこちらです。
Met Office Hadley Centre observations datasets
こちらはIPCCの方で使われている気温です。「Climate Change 2013: The Physical Science Basis・第五次報告書」IPCCレポートで使われている気温です。
一番メインの気温のグラフはSPM(SUMMARY FOR POLICYMAKERS)の冒頭にある19世紀から直近までの気温のグラフ「Figure SPM.1」だと思います。
https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2018/02/WG1AR5_SPM_FINAL.pdf
このグラフの出展がまさかのこのSPMの中には書かれておらず、WG1(作業部会)の資料にありました。余談ですが、作業部会は以下のように分かれており、基本的に今の関心事は科学的知見なので「WG1」が焦点です。
第一次作業部会(Working Group I、又はWG I):
気候システム及び気候変動の関する科学的知見第二次作業部会(Working Group II、又はWG II):
気候変動に対する社会経済システムや生態系の脆弱性と気候変動の影響及び適応策第三次作業部会(Working Group III、又はWG III) :
温室効果ガスの排出抑制及び気候変動の緩和策
https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2017/09/WG1AR5_Chapter02_FINAL.pdf
WG1のChapter.2にありました。P.180の「Box 2.2, Figure 1」に載ってます。気温のグラフ一つにややこしい説明が書いてあるのですが、Met Office Hadley Centreというところが観測している「HadCRUT4」がソースであることがわかります。
このデータは地表付近の大気の気温のデータのようです。
このデータを含めここまで見てきた衛星からのデータと比較してみました。
こう見ると、IPCCが参照している「HadCRUT4」のデータが一番気温としては高いものの、上昇傾向であることはすべて共通ですし、上昇幅も同じような水準だとわかりました。
細かいことを言うと、それぞれどういう原理で温度を測定していて、どの程度正確性があるものなのかという議論が必要だと思うのですが、賛成派・反対派が用いている温度の生データを見てもトレンドに対して大きな食い違いがないことから、地球が温暖化しているということは、言えそうです。
二酸化炭素は大気中にわずかしかない
二酸化炭素濃度は0.054%と、非常に少なく、この量が多少増えたところで大気全体へのインパクトは乏しい、と番組で言われています。
二酸化炭素の大気中の含有量は日本工業規格のJISを参照すると、体積含有率は0.0314%と記載がありました(JIS 0201-1990:ISO 2533-1975)。JISは信頼のおけるソースですが、1990年のデータなので、2007年の番組での割合が高いことには納得がいきます。
ちなみにこれ、二酸化炭素は重いので、質量含有率に変換すると0.048%と1.5倍ほどに増えます。
ガス | 化学式 | 体積含有率 | 質量含有率 | モル質量[g/mol] |
窒素 | N2 | 78.084000% | 75.520323% | 28.014 |
酸素 | O2 | 20.947600% | 23.141666% | 31.9988 |
アルゴン | Ar | 0.934000% | 1.288156% | 39.948 |
二酸化炭素 | CO2 | 0.031400% | 0.047709% | 44.0095 |
ネオン | Ne | 0.001818% | 0.001267% | 20.183 |
ヘリウム | He | 0.000524% | 0.000073% | 4.06 |
クリプトン | Kr | 0.000114% | 0.000330% | 83.8 |
キセノン | Xe | 0.000009% | 0.000039% | 131.3 |
水素 | H2 | 0.000050% | 0.000004% | 2.094 |
一酸化窒素 | N2O | 0.000050% | 0.000076% | 44.018 |
メタン | CH4 | 0.000200% | 0.000111% | 16.0403 |
オゾン夏 | O3 | 0.000007% | 0.000012% | 47.992 |
二酸化硫黄 | SO2 | 0.000100% | 0.000221% | 64.068 |
二酸化窒素 | NO2 | 0.000002% | 0.000003% | 46.005 |
よう素 | I2 | 0.000001% | 0.000009% | 253.808 |
空気 (合計) | 100% | 100% | 28.96442 |
こうみると、0.1%にも満たない二酸化炭素が多少増減したところで本当に地球全体の温暖化にインパクトがあるのか、というのは感覚的に疑問に思うところではあります。
長くなったので次に持ち越したいと思います。以下のようにこの番組で触れられていたことで検証したいトピックはまだまだあります。
- 最大効果を持つ温室効果ガスは水蒸気?
- 二酸化炭素が増えたから温度が上がったのではなく、温度が上がったから二酸化炭素が増えた?
- 地球の大気温度を左右するのは、太陽活動と宇宙線?
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