随分前なのですが、山口周さんが一流・二流・三流の話をしていて、当時からずっと印象に残っています。講演だったのですが、Newspicksの記事で探してみたら以下の記事の中でも同じ話をしていました。
今回この話を振り返りながら、スタートアップでも起こりうる組織の劣化について考察してみたいと思います。
組織が抱える劣化という宿命
山口周さんの考える組織の劣化とは何か、まずは説明します。
組織にいる人材を一流、二流、三流に分けると、それぞれは以下のような特徴と人数分布を示します。

まず、一流がゼロから会社を立ち上げます。創業者に限らず一流は基本的に格付け、権力に興味がありません。

一流から経営権が引き継がれていく中で、母数の問題もあり支配権が二流に移ります。

二流の人は、自分が二流であることを自覚できるだけの力はあり、誰が一流化そして自分が一流にはなれないこともわかっています。然るに自分が出世するにつれそのことが露呈するのを恐れ、周りの一流を抹殺しにかかります。
そもそも二流が権力をとりやすいのは一流に対して数が多いこと、加えて政治力が高いことにあると言えそうです。
そして三流は、二流のことを一流だと思っているため、三流が周りにいる限り安泰です。

二流の人は自分の言うことを聞く三流で周りを固めるため、二流のリーダーの周りに三流のフォロワーが固まり、一流は隅に追いやられてくすぶるという組織が出来上がります。

そして地道に二流リーダーに仕えた三流にもついに権力の座につく機会が訪れます。このときには、もはや組織の中枢は三流に牛耳られ、ボトムではあきらめ感と無力感が漂い、然るに疲れ切って自分のことしか考えなくなるという最悪な状態に陥ります。

Opinion or Exit、Opinionが通じる組織は貴重
人は自分が思いつかないような切れ味のいい提案や、自分の間違いを指摘してくれる人よりも、自分の言うことを聞いてくれる人が可愛いと思う、それは性だと思います。
この構図は宿命的に起こりうると思っていると、逆に言えばこの通りになっている組織は当たり前のことが起きていると捉えられますし、そうじゃない場合は何かしらの対抗策が功を奏している可能性があり、そんな組織に所属できることに感謝した方がいいとわかります。
劣化しきった組織は崩壊し、また新しいサイクルが生まれます。日本と言う大きなサイクルとしては、おおよそ80年くらい、この明治から戦後、そして戦後から数えるとそろそろガラガラポンの時期です。大企業の組織は劣化しきっていると捉えるのが自然ということでしょう。
これに対し、山口周さんは権力がない人間が取りうる手段は「Opinion」か「Exit」だと説いています。実際には「Opinion」を実践し、効果が得られなかった場合は、「Exit」するしかないのだと思います。そして、「Opinion」も「Exit」もしないのは、権力者に対して賛同していることを意味する、という厳しい指摘をされています。
しかし、そもそも劣化した組織は、権力者の周りは「YESマン」と「忖度マン」が脇を固めている状態であり、「Opinion」が効くわけがありません。従って「Opinion」を試しつつも「Exit」に至ります。
私自身は、「Opinion」をちゃんと聞いてもらえたことと、外されたことと両方経験し、前者が如何に有難いことなのか後者を味わって身に染みて感じました。当時は、「当たり前のことを言ってて、これが聞き入れられないのはおかしい。通って当然だ」と思っていましたが、今思えば不遜な態度だった思い猛省です。真っ当な意見を聞いてもらえる組織というのは非常に貴重です。
スタートアップは一流に率いられた組織なのか
スタートアップはまさに組織の始点であり、社長、CEOと聞くだけでみんな一流に思えてきます。
スタートアップの特徴として、
- 人数が少ない
- 組織も文化も出来上がっていない
という特徴があるわけですが、ここでもし二流経営者が組織を作るとどうなるか、これはすなわちYESマンと忖度マンを引き立てていくということになるわけですが、これが起こると爆速で組織は劣化します。
人数が少ないからこそ文化の浸透は容易です。かつ元々文化自体が形成されていないため、インストールもしやすい、権力争いはすぐに表面化し、二流経営者に率いられたスタートアップでは一流は一層されます。当然良いことも浸透は早いのですが。
組織の文化を作るのは、やはり経営者だなと感じます。特にそれは人事に現れます。口でどう言おうが、人事はウソをつきませんし、どういう人間を引き立てていくのか下からはよく見えます。
カーブアウト型のスタートアップでは
そして特にカーブアウト型のスタートアップの場合、大企業からスタートアップの加わる経営陣がいる場合があります。劣化した組織からカーブアウトしてきた場合、二流経営者が率いるリスクが通常よりも高いと思います。
基本的に大企業の中にある技術シーズを生かそうとしたときに事業シナジーが乏しい事業になる場合はカーブアウトすることで新たなビジネスが生まれ、親会社の大企業も効果の高い投資リターンが得られると思っているのですが、経営面に関してはゼロからのスタートアップよりもしがらみが大きいと思っています。
外からカーブアウト型のスタートアップを見る場合はその成り立ちに注目する方が良さそうです。
さて、今回は組織の劣化からスタートアップにおいてどうか考えてみましたが、求職者という立場で考えたときの難しさは、どういう社長か見破るチャンスは基本的に面接の一回しかなく、かつそれはこちらが見られている場なのでより難易度が高いということだと思います。
外部に出ている記事なんかは美化されていたりしますし、良いことしか書いていない場合も多いので参考にならないと思っていますが、どこかで登壇されていたりすると喋っている姿を見れるので、(動画に残っていると最高ですが)、判断材料になると思います。
組織が劣化してしまうと、実質的にExitとなるため、入口の段階で如何に精度よく組織状態を見破れるか、その選球眼を鍛えていくしか今のところ手段が内容に思います。
どういう質問をしたら一流だとわかるか、そんなハウツーはわかりませんが、山口周さんお言葉を借りれば、一流がわからない時点で自分は三流ということなんでしょうね笑。
それでも一流の経営者だと自分なりの判断で行った場合は、結果に対してフィードバックがかかるため、その認識力は向上していくと思います。そしてどういう人を引き立てているのか、ということは重要なファクターでしょう。
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