2020年1月公開、「フォードvsフェラーリ」という映画を見て、大企業病の組織の中で成果を出す一つの成功例を見たので、これを取り上げたいと思います。
実話に基づいたお話のようです。
以下ネタバレするので、これから見る予定の方はご注意ください。
余談ですが、この映画はIMAXで上映されていましたが、レース系の映画の臨場感は半端じゃないなと思いました。
映画設定:真の敵は・・・大企業病の自社
フェラーリ打倒を託されたフォードのシェルビーは大企業組織のおけるプロジェクトマネージャーです。ミッションを達成するためには、組織に馴染まない一匹狼タイプのマイルズの起用が欠かせないと考えるのですが、天才・異彩・奇才が往々にしてそうであるように、扱いにくいことこの上ないタイプのマイルズはフォードから嫌煙されてしまいます。
時は創業者ヘンリーフォードが代替わりし、フォード2世が率いる時代、ここ数年販売不振にあえぎ、業績低迷路線を突き進んでいます。成功体験に引きずられ、絵にかいたような大企業病に陥ったマンモス企業になっているのです。
社内政治がはびこり、稟議は膨大なスタンプラリー、意思決定スピードはなまけものクラス。
この映画、「フォードVSフェラーリ」というタイトルなのですが、シェルビーにとっての真の敵はフェラーリ以上に、「フォードそのもの」なのです。
つまり如何に速い車を作り、速く走るかの手前、メインは大企業病に陥った組織との闘いなのです。
組織と戦う上でのヒント
この映画を見ていて思ったことは、大企業病に陥るのは日本だけじゃないんだ、という当たり前の気づきです。この数十年、日本の大企業の生産性の低さ、時価総額ランキングの上位から消え去っている状況がよく指摘されていますが、GAFAを象徴とするシリコンバレー企業の成長を見ていると、大企業病が日本独特のものなのではないかと思えてくるのですが、ここで描かれるフォードは大企業病そのものです。大企業で長いこと働いてきた私としては、共感してしまう場面が多かったです。
組織で意見を通すためには、正面突破では難しいです。実際にシェルビーは最初正面突破を敢行し、見事に玉砕します。しかし組織の顔色ばかりを窺っていては結局本当にやりたいこと(ここではマイルズの起用)はできません。
組織と上手く対話しつつ、時には、ここぞという時には、リスクの高い手荒な手段も使う、それを見事に見せてくれます。
そして、だましだましに何とかすり合わせて進めていけたとしても、反対勢力は常に反転攻勢を狙っています。彼らとどう上手く折り合いをつけるのかという点はリスク要因として存在し続けます。しかしこれを鮮やかな方法で解決します。手柄の帰属です。
これはシェルビーやマイルズ自身も狙った結果ではありませんでしたが、結果的には、本当にやりたいことは達成しつつ、組織とも折り合いをつけるという組織人として最高のパフォーマンスを発揮します。
このディテールがどこまで実話に沿っているものかわかりませんが、 組織での本当に有能な人間の立ち回りがどういうものか楽しく学べる実例だと思いました。 おすすめです。
大企業からスタートアップへ転職した著者が見たリアルについて様々な記事を書いており、以下はそのまとめページですのでぜひ御覧ください(転職について、組織論、マーケティング、ITなど)。
P.S. 大企業病に陥らない(ように見える)日本の大企業の紹介
「ドンが語る。ダイキン、「無敵経営」のすべて」
ダイキンとは、空調機メーカーです。
以下抜粋です。
- 経営トップも考えていることの7、8割はほかの人と同じ。だったら、そうしたことは下の人間に任せ、彼らの仕事を邪魔しない。経営者は会社を外からの視点で見て、「皆が右を見ている時に、あえて左を見る」ことも必要です。そうすると見えないものが見えてくることがある。
- 2流の戦略と1流の実行力、半歩先でいい、間違ったらすぐ修正する。
- 海外の現場に行ったら、「マネージャーミーティング」というのを3日間くらい開いて、そこで現場のことを聞き取るし、こっちも言いたいこと言います。そうしたら、ダイキン本体の役員会に諮る前にその場で決めていく。これがダイキン流のフラットな組織運営だとか現場中心の組織だと思いますね。
- よく「ヒト・モノ・カネ」と言いますが、「経営の営みは人」やと思うんです。企業の技術力も販売力も全部、人ですわな。買収でも最後は人同士の対話。リーダーシップもリーダーは人。経営の安定時と緊急時では、リーダーシップは違うから、状況に応じて向いている人に変えていかなあかん。
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