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地球温暖化対策!どれだけ二酸化炭素を減らせば良いのか

地球温暖化がどのようにして注目され今日に至ったか、世界で政治的に解決に向けた合意形成が形成されていく経緯について前回まとめました。

地球温暖化の根拠として使われるデータは、IPCCを出典としていることが一般的です。
ではそのIPCCのレポートを読み解き、地球温暖化対策としてどんな目標が設定されており、何をしなければならないのか、このあたりを読み解きたいと思います。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、気候変動に関して科学的および社会経済的な見地から包括的な評価を行い、5~7年ごとに評価報告書を公表しています。

地球温暖化に対する国際的な取り組みに科学的根拠を与える重要な資料となっており、現在の最新は2013年9月2日~26日@スウェーデン ストックホルムにおいて発表された第5次評価報告書(AR5)になります。

環境省:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)

3つの作業部会で構成されている中で、『気候変動 – 自然科学的根拠』を扱う第1作業部会の報告に関しては、第6次評価報告書(AR6)が2021年8月9日に公開されており、順次他の報告書も公開されていく予定です。

環境省:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)



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CO2と温度上昇の関係

IPCC 第6次評価報告書 第1作業部会報告書 2021年

最新の第6次報告書では、どのくらいのCO2が排出され、どのくらいの気温上昇につながるとシミュレーションされているのでしょうか。排出量毎に複数のシナリオを描いています。

  • CO2排出量が2050年に2015年比約2倍になるCHG排出が非常に多いシナリオ(SSP5-8.5)
  • CO2排出量が2100年に2015年比約2倍になるCHG排出が多いシナリオ(SSP3-7.0)
  • CO2排出量が今世紀半ばまで現在の水準で推移するGHG排出が中程度のシナリオ(SSP2-4.5)
  • CO2排出が2050年頃に正味ゼロになり、その後は正味負になるGHG排出が少ないシナリオ(SSP1-2.6)
  • CO2排出が2050年頃に正味ゼロになり、その後は正味負になるGHG排出が非常に少ないシナリオ(SSP1-1.9)

それぞれのシナリオ毎にどれだけの気温変化が起こるかを示したグラフが次のグラフになります。

世界平均気温は、全ての排出シナリオにおいて、少なくとも今世紀半ばまでは上昇を続け、向こう数十年の間に温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21 世紀中に、地球温暖化は 1.5〜2度を超えると述べられています。

これはすなわち、SSP1-2.6というのが最低目標ラインということになるわけですが、年間のGHG排出を2050年頃までに半減させ、2080年頃には賞味ゼロということを意味します。

この2度という数字がパリ協定の中で定められた目標ラインです(パリ協定については前回記事参照)。

(参考)IPCC 第5次評価報告書 第1作業部会報告書 2014年

第5次報告書でも、どのくらいのCO2が排出されるとどのくらいの気温上昇につながるかということを排出量毎にシナリオを複数描いています(代表濃度経路シナリオ:Representative Concentration Pathways)。

このまま温暖化対策を行わないと、2100年までに最大4.8℃上昇という高位参照シナリオ「RCP 8.8」に対し、パリ協定で目標値にもなった2℃以下に抑える低位安定化シナリオ「RCP 2.6」では、2050年頃に気温の上昇が2℃程度で止まるシナリオになっています。

では、CO2をどのくらいの排出量に抑えればIPCCシナリオは「RCP 8.5」から「RCP 2.6」に下げられるのでしょうか。

下図より累積のCO2積算量をおおよそ2900 Gt以下に抑える必要があるということがわかります。 濃度で表すとおよそ480ppmです。 これは地球上にどれくらいのCO2があるかという積算量がどれだけ地球を温めるかということを規定しているということです。

2011年までに既に1900 GtまでCO2が蓄積されており、現在は毎年35 Gtほどをここに加算させているため、ここから大きく年間排出量を減らさなければならないことになります。

IPCCの「RCP 2.6」は、2025年くらいまでに年間CO2排出量はピークアウトさせ、その後徐々に減らして2070年頃にはゼロになるという相当アグレッシブな計画です。それでも達成見込みが66%という記載になっています。

ICPPの可能性の表記はわかりづらいですが、参考までに残りの34%で何が起こるのかというと2℃に収まらず3-4℃まで上がってしまう可能性を示しています。

余談ですが、CO2の量は資料によって炭素量に換算している場合もあり、その場合は以下の計算式で換算できます。

tCO2=3.67*tC

tCO2:二酸化炭素(CO2)の重量に換算したもの
tC:炭素の重量に換算したもの

また英語の資料でよく見る単位はGtですが、日本の資料でよく見る億トンに換算した場合、1 Gt=10億トンになります。

IPCC「1.5℃特別報告書」 2018年

上記の2℃シナリオから更に踏み込んだ1.5℃に言及したIPCCの報告書が第5次報告書の後のパリ協定を経て作成されました。

その背景は、パリ協定における「1.5℃」への言及です。2℃目標の一方で、2℃の地球温暖化でも深刻な影響を受けるリスクのある、気候変動に脆弱な国々への配慮があり、UNFCCCは、IPCCに対して本報告書の作成を招請しました。

1.5℃と2℃の違いについては後述として、1.5℃に抑えるためにはCO2をどれだけ減らす必要があるのでしょうか。これについては、
2030年までに2010水準から約45%CO2を減少させ、2050年前後にCO2を正味ゼロに達する
という記載があります。

IPCCの報告書の次のページには4つのシナリオの前提条件があるのですが、世界各国が今後どのように成長していくかの予測は困難で、幅のある前提となっているのですが、それらを盛り込んだとしても概ね上記の目標ラインが必要というのが確信度の高い予測のようです。


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気温の閾値2℃はどこから来たのか

パリ協定では、「世界の平均気温の上昇を工業化以前から2℃以内に抑える」というのが目標として定められています。(これは前回のブログで取り上げました↓)

この「2℃」というのはどういう意味があるのか、てっきり2℃を境に地球環境への影響が甚大になるといった科学的理由があるのかと思っていたのですが、どうやらそうではなく政治的に決められたラインのようです。

何度気温が上昇したらどんな影響が出る、ということを正確に予測することは難しいですし、気温が上がるほど影響が大きくなるため、確かに誰かがバシっと決めて目標設定をするしかありません。

調べてみると、1975年にエール大学の経済学者ウィリアム・ノードハウス氏が「摂氏2度以上の上昇は過去10万年で経験したことのない気温」に警鐘を鳴らしていたことが歴史の始まりのようです。

気温が高くなるとどんな影響があるのか

IPCCの第5次報告書では、気温が高くなるとどんな影響が出るのか、気温を横軸にとったときの想定される影響は幅があるものの以下のように想定されています。

これを見ていても、何℃以上だと問題だ、とラインを引くのは難しいことがわかります。現在までに既に1℃世界の平均気温は上昇しているわけですが、既に影響は出始めていて、わずかでも上昇を抑えるべく一刻も早く効果的なアクションが必要だと言わざるを得ません。


そしてIPCCの1.5℃報告書では、1.5℃と2℃の上昇でどれだけ影響に違いが生まれるかについて以下のようなリスク想定の記載があります。

以下に記載しなかった定性的なリスク増加としては、極端な気温、強い降水、干ばつ、熱帯低気圧の数、森林火災、侵入生物種の広がり、永久凍土の融解、貧困及び不利な条件の増大、健康リスク(オゾンに関連の死亡、ヒートアイランドによる熱波、マラリアやデング熱)、食糧生産料の減少、水ストレスのリスク増大が述べられています。

1.5℃の地球温暖化に関する予測2℃の地球温暖化に関する予測
極端な気温• 中緯度域の極端に暑い日が約3℃昇温(H)。
• 高緯度域の極端に寒い夜が約4.5℃昇温(H)。
• 極端な熱波に頻繁に晒される人口が約4.2億人、例外的な
熱波に晒される人口が6,500万人減少(2℃比・M)。
• 中緯度域の極端に暑い日が約4℃昇温(H)。
• 高緯度域の極端に寒い夜が約6℃昇温(H)。
干ばつ・降水不足• 持続型社会に関するSSP 1シナリオでは、1986〜2005
年を基準として、干ばつの影響を受ける世界全体の都
市人口が35.02±15.88千万人になる(M)。
• 持続型社会に関するSSP 1シナリオでは、1986〜2005
年を基準として、干ばつの影響を受ける世界全体の都
市人口は41.07±21.35千万人になる(M)。
洪水•1976〜2005年を基準として、洪水による影響を受ける
人口が100%増加(M)。
• 1976〜2005年を基準として、洪水による影響を受ける
人口が170%増加(M)。
生物種の地理的
範囲の喪失
• 調査された105,000種※のうち、 昆虫の6%、植物の8%
及び脊椎動物の4%が気候的に規定された地理的範囲
の半分以上を喪失(M)。
• 調査された105,000種※のうち、 昆虫の18%、植物の
16%及び脊椎動物の8%が気候的に規定された地理的
範囲の半分以上を喪失(M)。
バイオーム
(主要な生態系分類)の変質
• 世界全体の陸域の面積の13%(四分位範囲8〜20%)
において、生態系が一つの分類から別の分類に変質(M)。
• 1℃の地球温暖化では世界全体の陸域の面積の約4%
(四分位範囲2〜7%)において変質。
2℃に比べてリスクが50%少ないと予測(M)。
海氷の消失• 昇温の安定後、少なくとも約100年に1度の可能性で、
夏の北極海の海氷が消失(M)。
• 昇温の安定後、少なくとも約10年に1度の可能性で、夏
の北極海の海氷が消失(M)。
サンゴ礁の消失• さらに70〜90%が減少(H)。 • 99%以上が消失(VH)。
生物種の損失• CO2濃度の増加がもたらす海洋酸性化のレベルは、昇温による悪い影響を増大
• 酸性化をさらに増大し、広範な種(すなわち、藻類から
魚類まで)の成長、発達、石灰化、生存、従って個体数に影響を及ぼす(H)。
漁獲量の損失• 海洋での漁業について世界全体の年間漁獲量が約
150万トン損失(M)。
• 海洋での漁業について世界全体の年間漁獲量が300
万トンを超える損失(M)。

※ VH:確信度が非常に高い H:確信度が高い M:確信度が中程度

これを見ると恐ろしく、なんとか1.5℃に収めたいと思います。

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CO2排出量ゼロとはCO2排出量とCO2吸収量がバランスした状態

2070〜2080年という未来とはいえ、GHG排出を賞味ゼロにする必要があるということはわかりました。全くCO2を排出しないというのは不可能なのではと思いますが、忘れてはならないのは、地球に存在するCO2を吸収してくれる森や大地の存在です。

しかしながら1900年以降このCO2排出(約37Gt)とCO2吸収(約3Gt)のバランスは大きく崩れていることです。 現在のCO2排出量を1/10にしてようやく CO2排出とCO2吸収のバランスが取れることになります。

まとめ:IPCCによれば、私たちはCO2の排出量をほとんどゼロにしなければならない

今回IPCCのレポートをベースに、CO2をどれだけ排出するとどれだけ気温上昇が起こるのか、そして平均気温上昇を2℃以下に抑えるという目標について、その背景についても触れながら、どのくらいCO2排出量を削減する必要があるのか見てきました。

平たく言ってしまえば、ほぼCO2排出量をゼロにしなければならない、ということだと思います。豊かな生活を享受する我々が生活水準を落とさずに実現できるのか、もしくは生活水準を落とすことを許容できる世の中になるのか、間違いないのは、これから50年間かけて膨大なイノベーションを起こし続けることが必要だということです。

※更新履歴

  • 21/9/17:第6次報告書の内容を加筆
  • 21/1/16:パリ協定の2℃目標から、IPCC最新報告書の1.5℃目標へのアップデートを反映して更新
  • 20/2/24:初回投稿

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