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太陽光発電の今後、主力電源としての果てしないポテンシャル

産業革命を契機に、化石燃料を燃やすことで人類は経済発展を成し遂げてきました。しかし脱炭素化の必要性から、その原動力である化石燃料から再生可能エネルギーへの転換に舵を切っています。

その大本命は太陽光発電でしょう。主力電源として化石燃料の代替となりうるのか、そのポテンシャルを見ていきたいと思います。エネルギー収支や、代替燃料については前回以下の記事でまとめています。

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2040年に向けた再生可能エネルギーの今後の拡大シナリオ

太陽光や風力は尽きることのないエネルギー源です。季節や天気、一日の時間帯によって発電量が変化する、見方を変えると安定しないという特徴があります。

世界の電源別設備容量の変化

国際エネルギー機関が年に一度発行する「World Energy Outlook」は、エネルギーの世界のマクロトレンドを捉えるには最も良い材料だと思います。実際によく引用されています。
しかしこれは無料で見れないため、今回はネット上で公開されているまとめを引用しました。

WEOでは、将来予想をいくつかのシナリオで表現します。未来のことは誰にもわからないため、色んな仮定を置いてその場合どうなるか、を考えるのは意義があると思います。WEOの3通りのシナリオ以下のようになっています。

  1. 現行政策シナリオ:実施中のエネルギー施策ベース
  2. 新政策シナリオ(中心シナリオ):発表された未実施のエネルギー政策や関連計画が実施されると想定
  3. 450シナリオ:パリ協定を満たす(産業革命前に比べ長期的な気温上昇を平均2℃未満に抑える)ためのエネルギー進路

現実的なラインである「2」における世界の電源構成の変化を見ていきます。

JAIF:「世界エネルギー展望2016」 World Energy Outlook 2016 の概要紹介
https://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2017/01/World_Energy_Outlook_2016.pdf

現在既に31%ある再エネの設備容量はおよそ半分にまで増えると予想されています。これは十分「主力電源化」と言っても良さそうです。

「化石燃料および原子力」の内訳はこのグラフだとわかりませんが、別のページに「原子力」が606GWと記載がありましたので、引き算すると「化石燃料」は11170×54%-606=5426GWとわかります。

設備利用率を踏まえなければ、再エネの実力は見えない

再生可能エネルギーのデメリットとして、いつでも発電できるわけではないことを挙げました。では一体どれくらい発電できるのでしょうか。

前回原子力の稼働率について触れましたが、およそ70%でした。
以下のデータを見ると、これまでの主力電源である「火力」「原子力」の稼働率は70%です。
しかし、今後主力になっていく「風力」は20%「太陽光」は12~14%しかありません。
「火力」「原子力」と同じ発電量を供給するためには、「太陽光」は5倍の設備を設置する必要があります。

長期エネルギー需給見通し小委員会に対する 発電コスト等の検証に関する報告(案)
総合資源エネルギー調査会  発電コスト検証ワーキンググループ(第6回会合)平成27年4月
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/006/pdf/006_05.pdf

先ほどWEOの電源別の設備容量を見ましたが、発電量はどうでしょうか。

電力の表し方は出力と電力”量”の二種類があり、よく混在して出てくるので注意が必要です。

発電出力≒設備容量:kW
発電電力量:kWh … 1kWの出力で1時間発電したときの電力量

こちらが発電電力量の2014と2040年(新政策シナリオ)の比較です。設備容量と比べると、再エネ比率が落ちていることがわかります。

  • 設備容量: 2040年…46%
  • 発電量 : 2040年…36%

ここで先に掲載した設備容量の円グラフと比較すると、各電源の設備利用率が見えてきます。「水力」は設備利用率40%と、モデルプラント試算結果と概ね一致するものの、「太陽光・風力」=「その他再エネ」の方は稼働率を30%にしないと設備容量kWと電力量kWhが一致しません。これはそれだけ高い稼働率を見込んでいるということを意味するわけですが、発電効率の向上も見込まれていると思われます。

加えて注視しなければならないのは、「火力」「原子力」の設備利用率です。本来70%の実力があるのですが、設備容量kWと電力量kWhが合う設備利用率を計算すると以下のようになります。

  • 原子力:85%
  • 火力 :43%

原子力発電所の設備容量割合は5.4%にすぎませんが、非常に稼働率がよくベースロードとして使われていることがわかります。一方で火力発電所の稼働率は本来もっと上げられるにも関わらず有効活用しきれていないことがわかります。これはおそらく調整用の電源として使われているからだと思われます。

電力は需要と供給が一致しないと停電する

再エネのデメリットとして挙がる「不安定さ」、これは一体何が問題なのでしょうか。

電力は需要と供給がピッタリ一致しないと(0.5%くらいは許容される)停電してしまいます。
私たちが家庭で使う電気の多くは直流(一定電圧、一定電流)ですが、送電ロスを減らす目的で発電所で発電した電気は交流で家庭まで送られます。この交流の電気は、周波数を持っていて、東日本は50Hz、西日本は60Hzなのですが、発電量が多すぎるとこの周波数が上がり、逆に少なすぎると周波数が下がります。

周波数が高すぎても低すぎても停電してしまう厄介な性質を持っているのです。日本では滅多に停電しませんが、これは世界的に当たり前ではありません。膨大な量の発電と電気の使われる量がピタリと一致しているというのは結構すごいことです。

発電所が大きくなればなるほど、一台の発電所が停止したときの周波数の変動が大きくなってしまいます。そのため、たくさんの発電所が敢えて全力で発電せず、余力を持って発電することで停電時にバックアップできるようにしています。

ではここに発電したり発電しなかったりする不安定な再エネ電源が入ってくるとどうなるでしょうか。そうです、周波数が乱れてしまいます。そのため、周波数が乱れたときにすぐに発電量を増やしたり減らしたりすることで調整できるように火力発電所が控えているのです。従って需要に占める再エネの割合が増えてくると、火力発電所は完全に停止することができないものの、フルで発電することもできない状態で待機します。これが火力発電所の稼働率が落ちている原因です。

「太陽光」「風力」の電源は昨今大量導入されることで価格低下が著しいです。既に場所によっては「火力」や「原子力」よりも安いところもあります。しかし、こうした再エネで発電した電力を使う場合は、「火力」を後ろに控えさせるといったバックアップが必要であることは留意する必要があります。その分のコストも含めて本当に安いのか考える必要があります。

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再生可能エネルギーの今後のポテンシャルは無尽蔵

世界の再生可能エネルギーのポテンシャル

再生可能エネルギーはどれくらい発電ポテンシャルがあるのでしょうか。
中々良質なデータソースを見つけられなかったのですが、以下の論文は真面目に計算して導かれたように見えます。

この論文の中で導かれた再エネのポテンシャルが下図です。

Global Environmental Change: Quantifying a realistic, worldwide wind and solar electricity supply
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0959378015000072

ポテンシャルといったら通常は年月が経ても変わらないように思うのですが、こちらの仮定では実際にその年における技術力で可能な限り発電してどのくらい発電可能か、ということを試算しているようです。

2010年から2070年にかけて太陽光の発電量が爆発的に伸びているのは、太陽光発電の発電効率の向上や、設置可能場所の拡大といった要因があるようです。

2070年の予想ベースよりも、今現在でどのくらいのポテンシャルがあるか、という方が現実的なのでこちらベースで見てみると、

1800eJ/a(year) = 500,000TWh

先ほどのグラフから、2040年の需要は世界で40,000TWh程度なので、世界需要の10倍程度のポテンシャルがあるようです。つまり、再エネだけで世界の電気を全て賄うことは、発電量に関して言えば可能だと言えます。

こちら仮に設備利用率を20%と仮定すると、設備容量は以下のように見積もれます。

500,000 TWh ÷ 24(時間)÷ 365(日)÷ 24(時間) =285TW

2040年に必要な設備容量の実に25倍に相当します。

また、再エネの主力は太陽光であることもわかります。太陽光、太陽熱で全体の1/3ずつを占めているからです。

地球に降り注ぐ太陽エネルギーを100%使えたら、1時間で年間需要に匹敵

上の500,000TWhという数字が大きすぎてイメージが掴みにくいので、太陽光のポテンシャルを別の観点から見積もってみました。

以下を見てみると、太陽からは地球に到達するエネルギーは途方もない大きさなのですが、このエネルギーは1kW/m2に相当するようです。半分程度が地表で熱になっていますね。

地球の表面積のうち、陸地部分の1%に太陽光パネルを敷き詰めるとすると以下のようになります。

1kW/m2 × 147Mkm2 ÷ 2(地球の半分しか光を受けない) × 1% = 736 TW

地表に届くエネルギーのうち、20%を電気に変換できるとすると、147TWです。

先ほどの計算で設備容量は285TWと試算したので、およそ半分くらいだとわかります。再エネのうち太陽光が支配的なわけですが、おおよそオーダーとしては似たような数値感となったので、ポテンシャルはこんなもんだと見ておいて大外れはしていないと思われます。

膨大なエネルギー量ですね。あとはこれを如何に経済的に活用できるか、ということになります。

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再生可能エネルギーのコスト

再エネ導入支援のための補助金

再エネの発電コストは近年急激に下がっています。今や世界では、10円/kWh以下、火力発電よりも安い水準になっています。このドラスティックな低コスト化の背景にあるのは、補助金政策により量産効果です。

LCOE(Levelized Cost Of Electricity、均等化発電原価)
建設費や運転維持費・燃料費など発電に必要なコストと利潤などを合計して、運転期間中の想定発電量をもとに算出する標準的な指標。

自然エネルギー財団: https://www.renewable-ei.org/activities/column/20170526.html
資源エネルギー庁:国内外の再生可能エネルギーの現状と 今年度の調達価格等算定委員会の論点案 2019年9月
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/046_01_00.pdf

太陽光や風車は量産製品ですので、大量に作るほどどんどんコストが下がっていきます。また改良が進むほど、太陽光の効率はあがり、風車は大型化、こうして発電コストは劇的に下がってきました。

そしてそれを後押ししているのが、FIT(固定価格買取制度)という補助金制度です。

再生可能エネルギーの固定価格買取制度
再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度。減資は我々の電気代に上乗せされる賦課金です。発電設備の高い建設コストも回収の見通しが立ちやすくなり、普及が促進。普及が進むことで高い発電単価も次第に低下していく。

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html

実際上のグラフからも、LCOEの低下が見られますし、日本のFIT価格も低下していっていることがわかります。

ちなみに、10円/kWhというのがどのくらい安いかというと、先ほどの図で発電方式による違いが一覧表からわかります。最も安い原子力で10円、主流の火力は12円程度です。そして日本における再エネは20円以上かかることがわかります。

また東京電力のHPで私たちの払っている電気代を見てみると、20円/kWh程度のようですね。

従量電灯B・C|電気料金プラン|東京電力エナジーパートナー株式会社
東京電力エナジーパートナー(EP)の「従量電灯B・C」ページ。東京電力エナジーパートナー株式会社は、お客さまのエネルギー...

発電単価と電気の小売価格が同じような水準なのが今の日本なので、日本でも地道に発電コストが下がってきているとはいうものの、まだ電力会社から見たら補助金なしではビジネスにならない水準だと言えます。

これから太陽光、風力が更に安くなると再エネ比率は上がってきますが、電力システム全体の不安定性も増すため、どこまで導入できるかは難しい問題です。

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コメント

  1. 水力の話も期待しています、太陽光が主力として、太陽光とは別の不安定周期を持つエネルギとして補助的には使えるはずだ、と。私としては、、、、小さい水力発電を3Dプリンタで格安に作れる時代になるといいんじゃないかな、と勝手に思ってます。もちろん、既存の大型水力のリプレースや補修、効率向上を省エネ、省資源で実現する技術も必要だと思います。

    • boompanch より:

      水力はあまり詳しくないですが、そのうち出てきます笑。あちこち飛びすぎて中々進んでないですね。
      揚水としては難しそうですが、安定電源として小水力はまだまだポテンシャルありますよね。

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