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大企業カーブアウトは象の行進

先日お世話になった大先輩と飲んできました。
新規事業の立ち上げをやっている方で、メディアでも取り上げられるほどヒットして、新会社としての立ち上げを進めている方です。

他の大企業がどうかわかりませんが、少なくともこの方の会社では中々こういったカーブアウト型の独立というのは前例がなく、画期的だと思っています。以前これについてはブログでも書きました


今回お話しているといくつか課題も見えてきて、大企業から新規事業を新会社として立ち上げて育てていくカーブアウト型の方法の課題が見えてきたので、そのあたりを今日は書きたいと思います。

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立ち上げまでに3年・・・

ようやく会社設立というところまでこぎつけたそうなのですが、 新会社としてカーブアウトの動きを起こしてから何と3年もかかっているそうです。

今回自分の所属会社と事業シナジーが見込める会社の二社の資本構成になるようですが、敢えて自分の所属会社の比率が50%以下に抑えて子会社にならないようにしたそうです。というのも、ロイヤリティが発生したり、ブランド使用料が発生したりするほか、企業ブランドの冠を被ることで事業内容に制約が生まれるとのこと。

せっかくカーブアウトするのに、親会社的にどうなんでしょうか・・・
意思決定を迅速化させ、投資したリソースの範囲内で自由にやらせて応援する、というスタンスじゃないと上手くいかないですよね。そのうえで、上手くいったらキャピタルゲインが生まれて親会社も儲かる、これがウィンウィンなんじゃないでしょうか。

そして何に時間がかかっているかというと、法務の承認を得るというところのようです。
二社でJV(Joint Venture)を作る場合、当然リスクマネジメントとして契約を結ぶわけですが、過去に契約で失敗して赤字を出した経緯から非常に法務が慎重になっていて、自らのリスク低減のために相手にはきつい要求をしつつ、じゃあ同じ条件を自分は飲むかというとそれは飲まない、といった要求を出したりして、折り合いがつかず伸びる。

本来であれば、法務はリスクの洗い出しまでで、そのリスクを織り込んでどう判断するのか、というのは事業部の所掌だと思うのですが、法務が強いと、このように法務に意思決定の権利が上がったしまうようです。

また、親会社の決済を得るには経営会議で通さないといけないわけですが、経営会議の日程調整にも難航するらしく、あれよあれよという間に3年だそうです。

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立ち上げメンバーのリスクとリターン

大企業からのカーブアウト、ここでのリスクとリターンの設計は非常に重要だと思います。
挑戦するインセンティブを与えつつ、既存事業で頑張る人たちとの平等性も確保しないといけません。個人的には以下の二点が大事だと思っています。

  1. ストックオプションを発行して、イグジットした時(上場 or M&A)に金銭的リターンが得られること、ただしこの場合は片道切符で失敗した時に元の会社に戻れる保証はない(戻れないわけではなく、中途採用のようなイメージで、実績をきちんと評価したうえで個人と会社で話し合って適切な再配置をするのはもちろんあり)
  2. 上手くいかなかったときは会社に戻れる保証を付ける代わりに、ストックオプションのようなインセンティブは無い、関係会社への出向のようなイメージ。紐付き。

今回のケースは全員が2番のケースのようです。つまり、数人のメンバーで新しく事業を立ち上げるのですが、上手くイグジットできても誰一人リターンはなく、社長含め一切ストックオプションが無いようなのです。

もちろん、個人がこれを望んでいなくて、会社への帰属意識が高いのであればいいのですが、少なくとも僕が話した大先輩は1を望んでいましたし、社員にその選択権があることが大事だと思います。

大企業でも、そのリソースや技術を使って新しい挑戦をすることができ、成功した暁にはリターンが得られ、その時は母体の会社も儲かる、そんな仕組みだとみんなハッピーだと思うのですが、どうやらそう簡単にはいかないようです。
ストックオプション発行も前例がないと(前例があるのも珍しいと思いますが)中々認めさせるのが難しいようです。

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制度設計は事前に必要

自分自身、前職時代に「新規事業を立ち上げる仕組みを作りたい」と思っていました。一方で「箱よりまず中身でしょ」と言う人もいましたし、自分でもそりゃそうだよな、と思うところもありました。しかしこうして中身ありき、ある程度成功が見込めるビジネスであっても実際に新会社としてスタートを切るには嫌になるほどハードルが高いことがわかります。

新会社立ち上げにかかわる大企業のバックオフィスのメンバーの立場になっても、今までやったことないイレギュラーな仕事が降ってきて顔をしかめたくなる気持ちもわかります。マニュアルくれよ、と思う気持ちもわかりまう。

改めて、会社として新規事業を立ち上げる枠組みを持っていることの大切さを感じました。大先輩の会社でも、ファーストペンギンが苦労したことで精度化されて二番目に飛び込んでいく人たちが続くといいなと思います。

P.S. 今週気になった新聞記事
[社説]クリステンセン教授の洞察

[社説]クリステンセン教授の洞察(写真=共同)
盤石に見える巨大企業がなぜイノベーションに出遅れ、新興勢力に打ち負かされるのか。そのメカニズムを解明し、世界の経営者に影響を与えた米ハーバード大経営大学院のクレイトン・クリステンセン教授が死去した。

「イノベーションのジレンマ」で有名な米ハーバード大経営大学院のクレイトン・クリステンセン教授が死去されました。この有名な著書は1997年に書かれていたようです。もう20年以上前なんですね。今なおその知見は大いに役に立ちます。

boompanchさんのレビュー
boompanchさんのクレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Pre...

技術の改良の先に無い、飛躍的な技術革新「破壊的イノベーション」を定義し、業界をリードしていた優良企業がなぜその地位を守ることに失敗するのか、そして破壊的イノベーションを起こす方法を論じています。

この社説では以下のように結んでいますが、本当にその通りだと改めて思いました。
「新市場に布石を打つ戦略的決断が下せるのは経営トップだけだ。クリステンセン理論は経営者に覚悟を迫る理論でもある。」

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